- 作者: finalvent
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/03/11
- メディア: Kindle版
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
仕事・家族・恋愛・難病・学問、そして「人生の終わり」をどう了解するか。ネット界で尊敬を集めるブロガーが半生と思索を綴る。
Amazon CAPTCHA
本書の著者であるid:finalventさんは、はてなダイアリーとココログでずっとブログを書いていてわたしも拝読しています。
著者のブログは政治や科学、料理、書評といった幅広い題材に言及する内容であり、切り口や踏み込み方、語り口がおもしろくていつも楽しみにしています。わたしは映画と本と走ること以外にはあまり興味をもたないのですが、そんなわたしでも興味を惹かれるくらいに読みやすく楽しいテキストです。
そういえば最近はケイクスにも寄稿されてますね。
ファインマンのあたりまでは読みましたが、ブログよりもかなり読みごたえがあるのでまだ全部は読みきれていません。
finalventさんの記事以外もおもしろい記事がたくさんあるので、ケイクスおすすめです!(ステマ)
わたしが著者のブログを読みだしたきっかけは正確にはおぼえていません。
おそらくはてなブックマークのホットエントリーにあがっていたのを目にしたのがきっかけではなかったかと記憶していますが、どの記事だったのか、どういう内容だったのかは記憶にありません。それでも、すぐにRSSに登録して購読したわけですからなにか相当に引っかかる内容だったのでしょうし、それ以降も特に購読を止めることなく読み続けていることを考えると内容や文体を含め、わたしは著者の文章がすごく好きなんだろうなと思います。
さて。
本書は今年で御年55歳になるというfinalventさんの半生をつづった本でしたが、ブログを読むだけではうかがい知ることができなかった著者の半生を追体験できる一冊でしてとてもおもしろかったです。普段から著者のブログを読んでいる方であれば「へえ、こういう人だったんだ」という発見があると思いますし、実際にわたしは驚くことがとても多かったです。ブログではあまりプライベートなことは書かれていないので当然ですが、お子さんがいらっしゃるとは思ってませんでしたし病気のこともまったく知りませんでした*1。
つまりわたしのように「著者への興味」というモチベーションがあれば楽しく読めると思いますが、逆に著者のブログをまったく読んでいない、もしくは著者にさほど興味がない方が読んだとしたらこれはどうなんだろうなとも思いました。おそらく著者に興味のない人が手に取ること自体ほとんどないのではないかと思うのですが、著者の人となりや普段からの発言を知らずに読むと、市井の人が自費出版した自伝と同じ位置づけになるような気もします。
もちろん文章自体のおもしろさはありますし、ユニークなイベントの多い半生だと思うので著者を知らずとも楽しめないとは言いませんが。
以下、わたしが本書を読んで感じたことを2点にまとめよう...と思っていたのですが、ひとつはなんだかまとまらなかったので1つだけにします。
ずっと知りたかったことが書かれていた
わたしが著者の発言で一番印象に残っているのは、ブログでもケイクスへの寄稿でもなく、twitterで発言された以下の一言でした。
このツイートは2010年のものなのでもう3年前のものなのですが、けれどいまだにこの言葉が頭を離れなくてふとした瞬間に思い出しては「自分は選択肢がまだ残っているから自分の人生にはなっていないな」と考えたりしています。不慮の事故によるけがや病気、リストラや家族の介護。そういった自分の力ではどうにもできないことにぶつかり、抗うこともできずにただ目の前にあることを受け止めて消化しなければならない日がくることは覚悟していますが、今のところはまだ気楽に他人の人生を歩んでいます。*2。
では、このツイートをした著者は果たして何のタイミングでこのようなことを思うに至ったのか、そのきっかけとなった出来事がなにかあったのかということを知りたいと思うようになりました。おそらく著者自身がなにかしらそういった選択の余地のない状況におちいったうえでのあの発言だと思っていたので、それが何なのかを知りたいとずっと思っていました。
そしてその答えは本書に書かれていました。
自分の脳の断面写真を見て、もう泣くことはなかったが、じんわりと絶望感に沈んだ。
これではじわじわと殺されていくようなものだなと思った。
この病気は治ることがない。治療法もない。
人生、終わったなという感じがした。
202ページより抜粋
著者は2001年に多発性硬化症という難病を発症したそうですが、以降治ることのないその病気と向き合って過ごされているようですし、このような体験をされているのであれば、あのような発言が自然に出てくるのもすごくわかるなと腑に落ちました。
まとめ
わたしは本書を読んでから他の人の人生に興味をもつようになりました。
もともとわたしは自分や近親者にしか興味をもたなかったのですが、こうやって他者の半生にふれてみてそのおもしろさに惹かれるようになりました。思い返せば小学生低学年のころ、わたしは伝記が大好きで暇を見つけては学校の図書館で偉人の伝記を借りて読んでましたが、あれも他人の人生への興味だったのかも知れません。
もっといろんな人の半生を知りたい。
わたしが本書から学んだのはその気持ちだと思います。