「ウェブはバカと暇人のもの」読んだよ

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

著者はニュースサイトの編集者をやっている関係で、ネット漬けの日々を送っているが、とにかくネットが気持ち悪い。そこで他人を「死ね」「ゴミ」「クズ」と罵倒しまくる人も気持ち悪いし、「通報しますた」と揚げ足取りばかりする人も気持ち悪いし、アイドルの他愛もないブログが「絶賛キャーキャーコメント」で埋まるのも気持ち悪いし、ミクシィの「今日のランチはカルボナーラ」みたいなどうでもいい書き込みも気持ち悪い。うんざりだ。―本書では、「頭の良い人」ではなく、「普通の人」「バカ」がインターネットをどう利用しているのか?リアルな現実を、現場の視点から描写する。

http://www.amazon.co.jp/dp/4334035027

本書のタイトルはまるでブログの釣りタイトルを思わせる過激なものですが、その内容はというとネットの実情をとても正確に表現していて非常に共感できるものでした。なかなかおもしろかったです。


わたし自身、かなり重度のネット中毒だという自覚があります。家に帰って一番最初にするのはメールチェックですし、ブログを書く時間を含めると相当な時間をネット上で過ごしています。だからネットと離れる時間が長いとストレスがたまりますし、実際に一年前にシアトルに行ったときに一週間ネットと離れて過ごした時などは「あー、ネットにつなぎたいなー...」と考えることもしばしばありました。
とはいえ、わたしは日常的に見ているサイトやブログは両手で足りるほどしかありません。そもそも定期的に見たいものなどほとんどないのです。そのくせ、ネットをしているとあっという間に1時間くらいは過ぎてしまうこともよくあることなのです。
いったい何がそんなに楽しいのかといわれると正直なんとも言えなくて、毎日はてぶやRSSからあがってくる情報の中から面白そうなものをピックアップしてそれらの記事を読むだけなのですが、こうやっていろいろな人の書いた文章をだらだらと読んで過ごす時間がとても好きなのです。


だから本書の「ネットは暇つぶしの道具だ」という主張にはとても同意しますし、そして暇つぶしになるということは暇のある人向けのメディアだという結論への帰結にも何の違和感もなく同意できるのです。


ただし、そんな暇つぶしのネットが大きな可能性を秘めているなんていうのは過大評価だという意見にはわたしは違うんじゃないかと思うところもあって、やはりネットには人と人がつながりやすくなる下地というものを作る力があると思うのです。著者は、「電話のように今まで出来なかったことが出来るわけではないし、ネットでできることは電話や他のものを使っても実現は可能だ」と言いますが、わたしはそうは思わない。
例えば、わたしがネットを通じて知り合った人々とネット抜きで出会えたかと言われるとまず間違いなく会えなかっただろうと思うし、人と人がコミュニティを作ったりコミュニケーションをするためのインフラとして、ネットというのは他の何物でも代替できないメディアだと思うのです。
わたしみたいな個人でも自分の意見を置いておくことが出来ることはとても嬉しいし、そこから出会える人がいることもとても嬉しいのです。


テクニカルな話をすれば、ネットはあくまで通信技術の発展という側面しかないのかも知れませんし、現状は暇人の遊び道具に過ぎないのかも知れません。それでも好きなことを発言できる、好きなことでつながれるこのインターネットという世界は単なる暇なひとの遊び道具で終わるとは思えないし、思いたくないのです。
とは言っても、率直にこの本の方が正しいことを言っているのは間違いないですし、わたしが書いたような理想ではない、現実と向き合って考え抜いた結論なのだろうという説得力が感じられます。


とにかく煽ることを目的に練られたであろうタイトルからは想像も出来ないほど、2009年現在のネットの実情をまとめたすばらしい本でした。今から10年後くらいに、今を振り返る際にぜひ読みたい一冊です。