「なぜ女と経営者は占いが好きか」読んだよ

なぜ女と経営者は占いが好きか (幻冬舎新書)

なぜ女と経営者は占いが好きか (幻冬舎新書)

「非科学的だ、インチキだ」とバカにし騒ぐ人間が白眼視されるほど、いまや世界中のVIP、政界・財界人が占い・呪い、スピリチュアルを信じ、それに基づいて行動している。これは事実である。では、この紀元前からの知恵の体系(占星術、易学)に皆が惹かれるのはなぜか?近年、金融・経済の近未来予測を次々当てた著者が、占術の世界へ飛び込んだ。「四柱推命」「九星術」を研究し、呪い(厄除け)につながる山伏修行を実体験。未来を見通す力の重要性を体当たりで説く革新的な書。

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わたしは映画を観たり本を読んだりする前に、それらに関わる情報を事前に頭に入れないようにしています。
もちろん情報を完全シャットアウトすることはできませんし、何も情報が無いことには観る/観ない、読む/読まないといった選別すらできなくなるのである程度の情報は得ますが、なるべく予備知識や先入観をもたずに作品と向き合いたいという思いから情報を極力入れないよう心がけています。


その流れはいまも続いているので、本書も「なんとなくタイトルがおもしろそう」というとても軽い気持ちで手に取ったのですが、決めつけと思い込みによる断言とどうでもいい話が羅列されているだけのひどい内容でした。
読み始めてしばらくはブラックなジョークを書いているのかと軽く流しながら読んでいたのですが、どこまで読んでも流れは変わる気配がなくしばし途方にくれてしまいました。


読み終えてからネットで調べてみたらその筋ではたいへん有名な方らしく、自分の不勉強さを恥じるとともに、私の「おもしろい人リスト」に新たなメンバーが加えられたのでした。


というわけで本書を読んだ感想をいくつか挙げたいと思います。

1. 占いの歴史やその内容について延々と語られている

本書を手に取る人はほとんどそうだと思うのですが、本書を読んで一番知りたいのは「なぜ女性や経営者が占い好きなのか?」というタイトルに対する答えだと思うんですよ。ところがその答えについては「未来志向だから」という帯にも書いていることとそれに対するいくつかの肉付けでさっさと済ませてしまい、あとはとうとうとおぼえたての占いの歴史や雑学を開陳し続けるという自己満足も甚だしい構成となっています。


あのー、別に占いの成り立ちや内容を知りたいんじゃないんですけど...。


そんな想いで読み終えた後に巻末のあとがきを読んだら「おそらくこの本が、今の日本で一番わかりやすい占いとそして呪いについての入門書となっている」と書かれていて再び脱力。

占いの入門書なんだったらそういうタイトルにして欲しかったし、こんなの読みたくなかったです...。

2. とりあえず全方位に対して手当たり次第にアタックするアグレッシブさ


占いを信じない奴らは学生勉強ばかりしていた頭がクルクルパーだと言い放ち、さらにそんな学生時代を過ごして大企業に就職したエリートサラリーマンは自分だけでは生きていけない人種だと断言して該当する人たちを一気に敵に回します。

ちなみに、このクルクルパーという言葉は本当にそのまま書かれていて「クルクルパーというの差別用語で使ってはいけないのかは分からない」と書かれています。おそらく差別用語ではないと思うのですが、そんなことよりも書いていいのかわからない書いてしまうところや、こんな校正の段階で消せるようなことまで残して出版されているのを目の当たりにすると「この本には編集担当がいなかったのか?」と思わずにはいられません。

芸風だとしてもこれはすご過ぎる...。


さらにサラリーマン層を敵に回すだけでは飽きたらず、「六十干支さえ知らないのに占いが好きといっちゃうのは問題」と女性へ攻撃の矛先を向け、さらには経営者たちは自分のいったことを理解できずポカンとしていると完全にバカにしだす始末...。

無差別テロとでもいうべきこの節操の無さに最初はかなり翻弄されたのですが、自分以外は「全部敵」みたいなアグレッシブさの表れと思えばこれはこれでおもしろいような気もしました。

笑えないけど。

3. 自信満々過ぎて読んでて辛い

自信をもって語るというのはすごく大事だと思うんですけど、あまりに無根拠な自信を並べられるとたいへんいたたまれない気分になります。というか本論に関係ない自慢が多過ぎるんですよ...。

    • わたしと議論して勝てるという人がいたら連絡して欲しい(誰もまともに相手にしたくない)
    • セックスが終わったら本を読んだりしてたので冷たい男だと思われていた(どうでもよすぎる)
    • いくら星占いの本を書いても知識人としての地が出てしまう(結局星占いをバカにしている)
    • 自分が神がかり状態になれないのは知性と教養が邪魔しているから(単なる自慢)
    • 予備校の講師でいろんな人と会ったことがあるので教育現場を知らないとは言わせない(意味不明)
    • わたしは過去と近未来の分かる人間であり、それを誇りにしている(電波)

というわけで、電波な人の寝言が大好きな人であればたいへん楽しめる逸品となっておりますが、たぶん多くの方にとっては特段面白みもなければ得るものもない本だと思います。わざわざ買うのはお金の無駄ですし、電波な人にお布施をする必要もありませんので、もし読みたい人はいっていただければお貸ししますのでお申し付けください。


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