「戦火の馬」見たよ


第一次世界大戦下のイギリス。丘陵地帯に住む農家の少年アルバートは、農耕馬のジョーイと毎日を共にし、固い絆で結ばれていた。ところがジョーイは軍に徴用され、騎馬隊に売られてしまう。アルバートはジョーイを探すため、徴兵年齢に満たないにもかかわらず入隊。戦地フランスへと向かうのだが…。1982年に発表され、これまでに舞台化もされたイギリスの児童文学をスティーブン・スピルバーグが映画化。敵味方の区別がわからない馬の目を通して、戦争の愚かさや悲惨さを浮き彫りにしている。

『戦火の馬』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
内容に触れている部分があるので未見の方はご注意ください


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

戦時下という過酷な時代をつよく生き抜いた一頭の馬「ジョーイ」の姿を描いた作品でしたが、たいへんおもしろかったです。

簡単に話をまとめると馬の半生をまとめただけの内容なんですが、これがもうグッとくるどころの話じゃないくらいに盛り上がってしまいました。
ジョーイとアルバートが仲を深めていくプロセスやジョーイとフレンド馬の友情物語はまるでラブストーリーのようにものすごくロマンチックだったし、戦場で怪我をしたジョーイを敵対する者同士がいっしょになって助けるところを観ていたら得も言われぬ温かい気持ちになりました。

まさか馬が流す目線にキュンキュンする日がくるとは思ってもいませんでした。

なにこの馬。超かわいい!


全体をとおしてみると、前半は「こうなって欲しくないな...」と思う方向にグイグイと物語は舵を切られたので観ているのがつらいと感じるシーンも多かったのですが、その分、後半は「こうなって欲しい!」と期待する方向にドンドン寄り添っていってくれました。そのおかげで、物語の経過にしたがってより作品がおもしろくなっていくように感じられたのもとてもよかったです。


くわえて、本作ですごく印象的だったのが、この作品には嫌な人がほとんど出てこないということなんですよ。
例外的に、アルバート一家がお世話になっていた地主やドイツ軍の将校に嫌な人がいくらかいましたが、概ねすごくいい人ばかりなんですよ。

戦争に連れて行かれるジョーイを「大切に扱うし戦争が終わったら返すから」と約束してくれた軍人や、甲斐甲斐しく世話をしてくれる女の子とその祖父、そして死ぬまでこき使われそうな勢いで酷使されていたドイツ軍から逃がしてくれた世話係などなど、ジョーイが困っている時にはかならず助けてくれる人がスッと現れるのが観ていてすごく救われたのです。

戦争下という自分の命さえも危うい非常事態において、これほど馬に優しくする人がいるというのはにわかには信じがたかったし、そういう意味ではリアリティがないと感じてもおかしくないと思うのですが、でも人の命も馬の命も同じくらい価値が無いモノとして扱われる戦時下だからこそ馬にもこれほど優しく出来るのかなと思ったのでした。


そして何よりすばらしいのはこの邦題。


原題が「WAR HORSE」で直訳すると軍馬なのですが、それだと戦争で活躍した馬を描いたという印象を受けるんですよね。もちろんそれは間違いではないのですが、今回付けられた邦題「戦火の馬」は、"戦時下を生きた馬"という意図を感じさせるものでしてジョーイの置かれた状況をすごく適切に表現していると感じたのです。


今年は「Friends with Benefits」という身もふたもないタイトルを「ステイ・フレンズ」と置き換えたすばらしい邦題と出会ったばかりなのですが、それに勝るとも劣らないすてきな邦題でした。この作品の魅力やよさを理解している方がつけたタイトルじゃないかなと思います。




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