「空中ブランコ」読んだよ

空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が……。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!? 直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾!

文春文庫『空中ブランコ』奥田英朗 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

イン・ザ・プール」が面白かったので、その続編を2冊購入してきました。本書はその続編第一弾。
テレビドラマにもなってたとは知らなかったけど、伊良部役が阿部寛ってのもずいぶんと冒険したもんだと感心してしまいました。これはこれで観てみたいけど、もう無理だろうなあ....。


さて。前作「イン・ザ・プール」を読んでて唯一分からなかったのが、伊良部のキャラクターは果たしてどこまで狙って作り出されたものなのかどうかということでした。他人に配慮するなんてことは一切せずに自らの欲望の赴くままに行動する伊良部ですが、その人柄というか奔放で他人に気を遣わせないキャラクターが功を奏して患者の抱える症状や問題を解決に導いてきました。それが彼の意図したキャラクター作りによる効果なのか、それとも彼の先天的なキャラクターが偶然向いていただけなのか、それがわたしにはどうしても判断できなかったのです。


本作を読んで分かったのは、「伊良部のあのキャラクターは大学時代には出来上がっていた」ということと、「伊良部は自分が楽に生きるためにはどういうふうに振る舞っていればいいのかということを知っている」ということでした。毎日を何となく過ごすだけではやり過ごせなくなった人たちが伊良部のところに訪れていると考えれば、後者のように考えて生きている伊良部の奔放な姿を観て患者が感化されるのは何となく分かるような気がします。
「性格なんて既得権なんだよ」と言い切る彼の考え方や行動の奔放さをそのまま真似ることなんて出来るわけがありませんが、でも大人になったからといって物わかりがよくなる必要なんて全然ないんですよね。真剣に声を荒げる人に向かって大人げないとかいう言葉を投げるのがよい例ですが、何でもかんでも冷静を装うことが大人になるということであれば、大人になるっていうのは本当にくだらないことだなと思います。


とは言え、私のような平凡な人間は、どんなにやりたいことがあってもすべてを失う覚悟をもって奔放にふるまうことなんて出来ないし、もし何か思い切ったことをするときにはその結果の損得を天秤にかけてやる・やらないを決めるしか出来ないわけですよ。だからこそ、伊良部のように自由に振る舞える人間にあこがれたり、ちょっとだけ嫉妬したりもしてしまうんだよなーとしみじみ実感させられました。


次は町長選挙読む!

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