「僕の妻はエイリアン」読んだよ

僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 (新潮文庫)

僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 (新潮文庫)

しばしば噛み合わなくなってしまう会話。「個性的」を通り越し、周囲の目を忘れたかのような独特の行動。ボキャブラリーも、話題も豊富な僕の妻だが、まるで地球人に化けた異星人のようだ…なぜ?じきに疑問は氷解する。彼女はアスペルガー症候群だった。ちぐはぐになりがちな意識のズレを少しずつ克服する夫婦。その姿を率直に、かつユーモラスに綴った稀有なノンフィクション。

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アスペルガー自閉症など、いわゆる発達障害に分類される人というのはわたしの身の回りでは見たことがなかったのですが、それゆえに該当の障害を持っている人に対して「それって単に環境に適応することを放棄してわがままをいうだけの自助努力の足りない人なんじゃないの?」なんていう意識をもっていました。
例えば、ネット上でとても無礼な発言をしてたたかれ始めると途端に「わたしはアスペルガーだからこうなんです、すいませんね」的な発言をしてごまかす人が以前いたのですが、それまでのやり取りは普通に出来てるようにしか見えないために単に幼稚で浅はかであるということを病気のせいにしてしまい「病気なんだからしょうがないでしょ」と周囲に配慮するように要求をするのってどうなの?と不満にさえ感じたことがあるのです。
このときに湧き上がってきた感情というのは「似非うつ」に対する嫌悪感というか反応と同じでして、うつ病というのが現実には存在するということはわたしでも理解出来るのですが、どうみてもうつ病とは思えないような人が病気であることをたてにしてすべてを許せと叫ぶ傲慢さに腹が立つのと似ているような気がします。


想像力が欠如しているという人もいるかも知れませんけど、見たことのないものを理解して認めるのはなかなか難しいことですよ...。


さて。
本書は遠距離恋愛半年で結婚した人が実は高機能自閉症と呼ばれる障害をもっていたという男性が日常の大変さをつづったエッセイです。内容は非常に面白いのですが、文体がものすごく特殊で読む人を選びそうな気がします。自分を夫、相手を妻と表記する点などが一番大きな特徴とも言えますが、それだけではなくどうも読んでいてもやもやとしてしまうことが多かったのです。
この文体に特徴があるという点については、巻末でその理由が明かされるので本書を読んだ人はそこまで目を通していただきたいのですが、なるほどなるほどと感心させられました。読み終えてからもう一度最初から読みたくなる小説というのは何度か読んだことがありますが、読み終わってから再度読みたくなるエッセーというのは初めてでした。


本書では妻がいかに普通の人と違うのかということが書かれているのですが、それを読んでいると発達障害にある人がどういう人なのかということがとても腑に落ちるように感じました。相手の感情を表情から読み取れないこと、発せられた言葉は本当に文字どおりの意味しか受け取れないこと、複数のことを同時に出来ないこと。とにかくいろいろな不都合があることを夫婦生活を送る日々の中で起きたハプニングをとおして描かれているために、自分のことに置き換えて考えるとその恐ろしさがとてもよくわかります。
自分の発した一言一言の真意を毎回毎回聞いてきたり、神経を逆なでされるような発言や行動を繰り返されたら、わたしだったら一ヶ月と持たずに離婚するか別居をすることになりそうです。我慢して一緒に住んでたら、短期間のうちに命のやり取りに発展することは間違いありません。そのくらい無理。


「こういう人もいるんだ」という事実を知るためには適した本ですが、実際に身の回りにいたらと考えるととてもブルーになります。
著者には大変失礼ですが、こういった状況に陥らないためにも結婚前には必ず半年くらい一緒に住む期間を設けた方がよいと切実に感じました。