「海洋天堂」見たよ


中国、チンタオ。妻に先立たれてから自閉症の息子・ターフーを男手ひとつで育ててきたワン・シンチョンは自身の余命があとわずかだと知る。シンチョンは仕事合間を縫って、息子がひとりでも生きていける術を教えていくが――。『北京ヴァイオリン』の脚本家が父と子の絆をテーマに描いた感動作。

『海洋天堂』作品情報 | cinemacafe.net

もう2週間前になりましたが、シネマロブレで観てきました。

成人した自閉症の息子を一人で育てている男性が自身の余命がわずかであることを知り、自分の死後も息子が生きていけるようにと奮闘するというお話。

基本的にはまったく明るい内容ではないのですし、あらすじで書いたとおり気の滅入る話なのですが、観ながらも観終えてからも決して悲観的な感情に支配されないとても温かい気分になれる作品でした。先天的な障害ゆえに周囲に迷惑をかけることの多いターフーに対して、まるで家族のように優しく接する人の多さがそう感じさせてくれたのだと思います。

たとえば近くの家に住んでる雑貨屋のチャイは「お父さんに好意を寄せている」という理由はあれど、日常的に二人の生活をサポートしてくれていましたし、勤務先の水族館の館長や水族館で出会ったサーカス団員のリンリンもターフーにとても優しく接してくれます*1

ただ、そういった支えがあればあるほど、シンチョンの死後に彼の代わりにターフーの面倒を見るといった決定的なことが誰にもできないことが明確になるわけでそこはすごく残酷だなと感じました。残酷というか、辛いっていう感じかな...。うまくいえないけど。


そして、ターフーが父から教えてもらったひとつひとつのことをしっかりと守ることで父が不在となった世界をつよく生きぬいている姿が描かれたラストはかなりグッときました。

父親が繰り返し教えていた時はまったく学んでいる気配のなかったターフーが、教えられたとおりに掃除を行い、バスを降りるときには手を上げて大声でそれを主張する。服を決められた場所から出して着る。たったそれだけのことなのですが、でも人がひとりで生きていくために必要なことを労を惜しまず教えた父親の功がこれを為したのだと思うと、心からそのがんばりを労わずにはいられません。

伝わっているかどうかわからないけれど、でも大事なことは繰り返し何度も伝えるべきだし、その労を惜しんではいけないんですよね。結果ばかり先に考えるだけで、労を惜しんでばかりのわたしには耳に痛いと感じるところも多かったです。


親にとっては、自分たち親がいなくなっても自活して生きていけるようになることが子どもに対してもっとも望むことですし、それは子どもに障害があろうがなかろうが関係ないんですよね。自分がもし子どもの成長を待たずにこの世を去らなければならないとしたら...と考えると、自分は果たしてなにを残すべきと考えずにはいられませんでした。



ちなみに、この作品はモーニングショー(8:10からの上映)での上映を観に行ったのですが、眠い目をこすりながら小山まで行ってみたらなんとまさかの一人鑑賞会でした。こんなにいい映画なのにね....。


↑ちなみにこの写真は観てると笑いながら涙が出てくるくらいすごく好きです


*1:ちなみにリンリンを演じたのはわたしの大好きなグイ・ルンメイでした。スクリーンで観たのは3年ぶりでしたがあいかわらずとてもキュートでした。