「すべては君に逢えたから」見たよ


舞台はクリスマス間近の東京駅。1日に100万人以上が利用するメガステーションに、人間不信に陥ったウェブデザイン会社社長、仙台と東京の遠距離恋愛、余命半年を告げられた新幹線の運転士、49年前の果たされなかった約束…。それぞれが抱える思いが、クリスマスをきっかけに10人の男女のそれぞれの“愛”動き出す――。

『すべては君に逢えたから』作品情報 | cinemacafe.net


(注意) 本エントリーは作品の内容や結末に触れている部分があるので未見の方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

予告を観る限りではあまり好きなタイプの作品ではなかったのですが、何となく気になって観に行ったらこれがまたすごくおもしろかったです。内容は冬の東京を舞台にした群像劇なのですが、すべてのエピソードがよいというわけではないのですが非常にグッとくるシーンがいくつか印象に残るよい作品でした。

この作品を観ながらふと思い出したのが2011年の年末に公開された映画で「ニューイヤーズ・イブ」という作品です。


ニューイヤーズ・イブ [DVD]

ニューイヤーズ・イブ [DVD]


「ニューイヤーズ・イブ」は大みそかのニューヨークを舞台にした群像劇でして、冬の大都市を舞台にした群像劇という点がこの作品と共通しています。冬になると寒くてひと肌恋しくなるためか、人と人のつながりをたくさん再確認できるこういった群像劇がすごく楽しく感じられます。

さらにこの作品では個々のエピソードの登場人物が疎でありながらもつながりをもっていて、その物語の接続の仕方もとても自然で物語に膨らみをもたせてくれていたように感じました。

そんなわけで非常におもしろかった本作のひとつひとつのエピソードについて感想をまとめます。


イヴの恋人

女優になりたいと上京したけれど鳴かず飛ばずで先行きも明るくないのであきらめて地元に帰ろうかと考えていた玲子(高梨臨)が、東京で過ごした思い出に最後の贅沢をしようと訪れたお店で黒山(玉木宏)と会うが、玲子は傲慢で自信過剰な黒山に嫌な目に合わせられてしまって...というところから始まるお話。

最初の印象は最悪!でも...というのはラブストーリーのお決まりというかもっともスタンダードな展開の一つなのですが、玲子が女優志望である、地元に帰ろうとしているという設定をうまく活かしてベタな展開をベタだと感じさせない構成になっていてすごくよかったです。
最後に会える部分はちょっと強引過ぎるかなとも感じましたが、そこまでに張られていたレンタルビデオや偶然会った場所に関する伏線がきれいに活用されていたのでこれはこれでありだなといたく感心しました。


玉木さんは強気で強引なキャラクターがすごく合うと思ったし、高梨臨さんの「女優を目指して劇団に所属している」という設定もとてもマッチしていてよかったです。あの二人はすごくお似合いだと思うし、最後に出会えた時はかなりキュンとしました。

遠距離恋愛

仙台ではたらく拓実(東出昌大)と、東京ではたらく雪奈(木村文乃)が「遠距離恋愛は大変でござる」と毎日四苦八苦するというお話。

実際は仕事が充実していて毎日電話とかメールとかLINEとか無理じゃね?という拓実と、少しでもいいから連絡が欲しいし会えるときは会いたいと駄々をこねる雪奈という構図なので、悩んでいるのは主に雪奈の方なんですが、恋愛というのは一方が不機嫌になればそれに呼応するように相手も不機嫌になるわけで、結局遠距離が原因で仲たがいしてしまうわけです。

わたしも結婚する前は遠距離みたいなことをちょっとしていたので二人の気持ちが分かるというか、どっちかというと雪奈の方の気持ちがわかるなと。もちろん拓実のように仕事が充実していてぶっちゃけそれどころじゃないっていう気持ちもわからなくはないんですが、でもなんか離れているからこそ日常のつながりは大事にしたいし、そうしないと物理的な距離だけじゃなくて心の距離まで離れてしまうような不安がわいてくるんですよね。

二人のどちらの気持ちもわかるだけに仲たがいするところなんか観ていていたたまれなかったし、いたたまれないけどでもしょうがないんだよなあ...と


そして最後の最後でやっと仲たがいを解消して二人は東京で会うことができたのですが、翌日は仕事なので拓実は仙台に帰らなければならず、それを雪奈が見送るのです。

仙台に帰る最終の新幹線に乗る拓実を雪奈が見送るラストのシーン、ホームにたたずむ雪奈をドアが閉まる直前に車内に連れ込んでしまうところはほんとうに最高でしたね。「え?明日仕事だよ」「明日の朝一で帰ればいいじゃん」っていうあの会話に思わずにやにやしちゃいましたよ。

わかる、わかるよ、その気持ち!
それをあっさりとやってのけた拓実はイケメンだ!(興奮)

もう興奮し過ぎて鼻血出た。そのくらいよかった。

クリスマスの勇気



本田翼ってほんとかわいいと思うんですが、映画だと何の役で出ても同じような演技なんですよね...。

ちなみにこの作品の中では彼女に関するエピソードは無いに等しかったので感想はとくにありません。

クリスマスプレゼント

養護施設を舞台にしたお話でしたが、ちょっといい話っぽさが鼻についてあまり好きではありませんでした。

二分の一成人式

10歳の子どもをもつ宮崎正行(時任三郎)はがんをわずらってしまい、余命数ヶ月と宣告されてしまいます。

残りわずかな時間をどう過ごし、自らの最期が近いことをどうやって息子に伝えるのか?というお話でしたが、なんかもう感情移入し過ぎてダメでした。子どもの年齢が近いというのもありますが、子どもが成人する前にこの世を去らなければならないことへの不安や悔恨がどれほど大きいのかということが容易に想像できちゃうんですよね...。

自らの余命を息子に伝えるシーンは本当に観ていてつらくてもう観ていられないくらいでした。自分だったら...って観ながらそればかり考えてしまいました。まだ自分のことも抱えきれていない子どもに、親の死や不在という大きな荷物を預けなければいけないことを思うともう言葉にならないですよね...。

そんなつらさがすごくよく伝わってくるよい演出でした。

ただ、父親から事実を伝える前や伝える瞬間はたしかにすごくグッときたのですが、伝えたあとのやり取りというか会話がちょっと演出過剰で冷めてしまってそれが少し残念でした。

遅れてきたプレゼント

49年前に駆け落ちしようね!と約束したんだけど、その待ち合わせ場所に男性がこなかった...という過去をもつ琴子(倍賞千恵子)。

彼女のもとにその男性の兄だと名乗る男性が現れて「あの日、待ち合わせ場所に行かせなかったのは私だ。弟は行こうとしていたんだ」と、一緒に乗る予定だった大阪行きの新幹線切符を見せ、その切符を見て「彼は駆け落ちしたくなかったわけじゃなくて同じ気持ちだったんだ」とうれし涙をするというお話。

観ながらよくわかんないし、いま振り返ってもよくわからないのですがわたしにはこれがどういう理由でいい話なのかさっぱりわかりませんでした。自分なら「いまさら何言ってんの?」ってしらけちゃうなーと思ってまったく共感も理解もできませんでした。

まとめ

そんなわけでいろいろと好き放題書いちゃいましたが、個々のエピソードは好き嫌いがありますが作品全体としてはまったくいうことなくおもしろかったです。これだけ豪華なキャストのわりにあまり人が入っていないようですが、ぜひ食わず嫌いせずにごらんいただきたい傑作です。


公式サイトはこちら