マラソンは毎日走っても完走できない―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ (角川SSC新書)
- 作者: 小出義雄
- 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 新書
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市民マラソン大会に出ると、30km過ぎから歩いてしまったり、あるいはスピードがガクンと落ちてしまう人がとても多い。みなさん、「毎日5km走っていた」など練習熱心な人が少なくないのだが、ではなぜ走れなくなってしまうのか?その理由は、毎日走っているだけではマラソンの練習になっていないから―。本書では、このマラソン用の練習を説いていく。初めて走ろうと考えている人から、将来フルマラソンを走ってみたいと思っているジョガー、そして3時間台での完走を目標にしているランナーにまで、段階別に伝授。金メダリストたちの練習内容も初公開する。
http://www.amazon.co.jp/dp/4047315060
今からちょうど5年前に仙台に住んでいる大学の先輩の結婚式に出たときのことなのですが、その先輩のお母さんから「ししゃもみたいな立派なお腹してるのねー」と言われたことがありまして、当時、26歳自称イケメンだったわたしはまさか面と向かってそんなことを言われるなんて創造もしていなくて雷に打たれたようなショックを受けたのでした。
ちなみにこのブログのタイトルにある「子持ちししゃも」というのはそのときの衝撃を忘れないように自分を戒めるためにつけたものなのですが、とにかくお腹は何とかしないとなーと思い立ちましてまずは簡単に始められるランニングから運動を始めてみようと思ったのがわたしが走り始めたきっかけなのです。
以降、怪我をしたり仕事が嫌で鬱っぽくなって走る気力がわかなくなったりと何度か続行の危機が訪れたのですが、何とか走り続けて5年目を迎えることが出来ました。昔に比べたら足はずいぶん筋肉質になったし、基礎代謝が上がったのか食べる量もかなり増えました。
ですが、いまだに一度に走れる距離は10kmくらいと大した長距離は走れず、フルマラソンはおろかハーフマラソンにさえ参加したことがないのです。たしかに走る距離そのものは週に20km程度ととても短いのですが、それでも何年も続けていればもっと長距離が走れるようになってもよさそうなのにな...と思っていた矢先にこの本に出会い、その疑問はあっという間に氷解しました。
今までいくつかこういう走る際に参考になるような本を何冊か読んだのですが、ダントツでこの本が一番よかったです。これからマラソンなど走れるようになりたいという人からサブフォーランナーを目指す人までをターゲットにしてとても分かりやすく具体的に書かれていてかなり参考になりました。
この本の内容を実践し始めてから約一ヶ月が経過したのですが、どんどん長い距離を楽に走れるようになっていることを日々実感しています。その成長している実感がすごく気持ちよくて、寒くて走りたくない時でもがんばろうという気持ちがわいてくるのです。
この本のおかげで、今まで以上に走るのが楽しくなりました。
とまあ、本書をひととおり褒めてみましたが、実際のところ書いてある内容そのものに目新しいことはほとんどありません。
少なくともどのトレーニング方法も他の本に書いてあるものが大半ですので、他に似たような本を読んだことがある人であればトレーニング方法そのものについては特に得ることはないはずです。
それでもわたしが本書をすばらしい本だと断言出来るのは、「やらなくてもいいことをはっきりとさせてくれる」からです。
普通、この手の本というのは理想というかあるべき姿を描いて「走るんだったらこうすべき」という方向性を説いてくれます。それらをちゃんと実践することでフォームはきれいになるだろうし、怪我もしにくくなることは何となくわかるのですが、でも実際にそれをすべて実践できるかと言われたら、まあ80%くらいは急には出来ないことばかりなのです。
もちろん「本気でやるならちゃんとやるべき!!」という気持ちはすごく分かるし、そもそもこういう本を書く人というのはずっと走ることと向き合ってきた人ですからいい加減なことを言うわけがないというのもすごく分かるのです。
でもこれから走り始めようという人や、体力の維持に役立てばいいなというくらいのちょっとだけやってみようかなという層にとってはこの「やらなきゃいけないことがたくさんある状態」というのはとてもストレスを感じるものなのです。
走ることってその行為自体がすごく疲れることなのに、さらにあれもこれもやらなきゃならんとなると一気にハードルが上がってしまってとたんにやる気がそがれてしまうのです。
始める前の準備運動が大事なのは分かるけど、あまり本格的なストレッチを教えられてもなかなか実践できないし、むしろこれをやるべきということを知り過ぎてしまっていると「知ってるくせにやらない」というストレスを感じてしまいます。
その点、本書では初心者は無理にやらなくてもいいことははっきりその旨記載していて、それをやるのかやらないのかはある程度読み手が取捨選択出来るようになっている部分がすごくよかったです。
加えて、具体的な方法論だけではなく、そのトレーニングをやるにあたってどういう心構えで望むべきなのかということも書いてあって非常に参考になりました。
最近は走ることにいき詰まったときには必ず読み直すことにしていますので、もはや走る上でバイブルという扱いになっている一冊です。もしこれから走ってみたいと思った人はぜひ一度読んでみてください。