- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03/02
- メディア: 文庫
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風は目印を見つけたかのように、彼に吸い寄せられる。海を渡る全ての風が、小さな弟の掌の温もりを求めている ――。不思議な楽器を演奏する恋人の弟との出会いを暖かな筆致で描く「海」、奇妙な老人から思いがけない人生の秘訣を授かる少年を伸びやかに描く「ガイド」など、『博士の愛した数式』の前後に書いた7編をまとめた玉手箱のような小説集。
http://www.shinchosha.co.jp/book/401304/
一般的な評価はとても高いのだけれど、どうしても自分には合わない本、著者というのはどなたにでもあるのではないかと思います。
わたしにとってこれに該当するのは宮部みゆきさんと小川洋子さんでして、両著者の本はいつも最後まで読んだことがありませんでした。普段は一度読み始めたものを投げ出すことはないのですが、どうもこのお2人の著書だけは続きを読む気が起きずにそのまま放置というパターンを繰り返していたのです。あまりにそれが続くのでもう本を買うことすらなくなっていたのですが、この「海」という本はものすごくおもしろいという噂を聞き、懲りずに手にとって見ました。
本書は非常に短い(一番短いのはなんと見開き1ページ分)7編の短編小説集です。
7編いずれもストーリー上の関連はまったくない上に、話に盛り上がりやオチがあるわけでもない非常に淡々と綴られたものばかりですがこれがとても読みやすくてとても楽しく拝読しました。話自体がおもしろかったのもありますが、話のひとつひとつが短かったのもよかったのかも知れません。
わたしは本を読んでいてその中に出てくるシーンを色でとらえるというか感じるのがすごく好きです。
色で感じるというのは、例えば夏の暑い日は青とか冬の寒い日は灰色というのがとても分かりやすい例ですが、それ以外にもシーンの描き方によって感じる色も変わってきてそれがとても楽しいのです。
ところが、不思議なことにこの本はどのシーンを読んでいても色が見えてこないのです。白というわけではなく無色に近い何もない色。
描写自体はとても緻密というか丁寧なのに、なぜかそこから色が見えてこないというのは今まであまり経験したことがなくて何故なのかとものすごく疑問を感じました。いまだにその理由はわからず少し悶々としています...。
本書は、一度読んで終わりというのではなく、布団やベッドの脇においておいて、寝れない時にちょっとだけ読むなんてのが似合う本だと感じました。
わたしの寝室にはおいておくことにします。