「アントキノイノチ」見たよ


高校時代のとある事件をきっかけに、心を閉ざしてしまった永島杏平(岡田将生)は遺品整理業という仕事を通じて、“命”の現場に立ち会うことに。そこで久保田ゆき(榮倉奈々)や良き仕事仲間と出会う。この出会いにより、徐々に心を開き始める杏平だったが、ある日、杏平はゆきの衝撃的な過去を知る――。

『アントキノイノチ』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
作品の結末に関する記載もありますので未見の方でこれからご覧になる方はご注意ください。


TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。
予告映像から予想される内容はあまりわたしの好みとは思えなかったのですが、榮倉奈々の笑顔があまりにかわいかったのでそれを楽しみに観に行ってきました。ざっくりとした感想を述べると予想外になかなかおもしろい作品でして、どうしても納得できないラスト以外はとてもたのしく鑑賞しました。よかったです。


本作は「みんなもっと人間同士の関わりを大事にしようぜ」というお話。


率直な感想を申し上げると、すべてがステレオタイプというかどこかで誰かが言ってそうなことを並べただけのような安っぽい話だなというのが見ながら受けた印象でした。岡田君がお尻丸出しの素っ裸状態で屋根の上に座っているシーンはたしかにインパクトがありましたがそれも一瞬ですし、正直ここの意図もよくわからずポカンとしてしまっただけでした。


とまあいいとこ無しみたいな書き方をしてしまいましたが、実際はまったくそんなことはなくて主張したいことがとても明確ではっきりと伝わってくる良い作品だったと思うのです。最初に書いたとおり、本作は人と人の関わりについてのお話でして、人と人の関わりが希薄になっていて嫌なことがあれば見なかったふりをしたり、自分に被害が及ばないようにとかげのしっぽ切りのようにさっさと切り捨ててしまう現代の人間関係のあり方に警鐘を鳴らそうとしているわけです。
いじめにしても、老人の孤独死についても、すべてはそういった自分以外の人間への積極的無関心のせいだととらえ、人は自分ひとりだけで生きているわけではないんだと、家族や友達といった人たちに関心を向けろとそういいたいわけです。


正直に言いますね。観ながら「うわー、説教臭いな...」とうんざりしてしまった一方で、でも伝えたい内容の是非はともかく言いたいことがはっきりと伝わってくるのはいいなと思ったんです。


あと、上で挙げたこと以外でよかったところといえば、ゆきを演じた榮倉奈々がかわいかったことですね。



彼女は決して演技がうまいわけではないのですが、表情のひとつひとつに惹きつけるなにかをもっているんですよね。今年観た「東京公園」でみせた表情も大変よかったですが、本作もそれに負けず劣らずといったかわいらしさでした。とくに今作では設定上あまり笑顔を見せない役どころでしたので、だからこそ不意に見せる笑顔がとても魅力的で思いっきり惹かれてしまいました。


そんなわけで基本的な部分についてはなかなかよかったなというのがわたしの感想です。


ただ、わたしがどうしても納得できなかったのはラスト直前でゆきが死んでしまったことなんですよね...。
あれがどうにも受け入れられませんでした。


もちろん、わたしが榮倉奈々が大好きなので最後まで生きてて欲しかったというひいきする気持ちがまったくないわけではありませんが、納得できないというのはそういった次元ではないのです。あのシーンの直前に、冬の海を前にして杏平はゆきの前で過去に自分に起きた出来事をすべて話し、「いろんな命がいまの自分たちにつながっているんだ」とここまで過去にとらわれ続けてきた二人がやっとすべてを受け入れて生きて行こうとするわけです。
このシーン、すごくいいなと思いましたよ。


そうだ、そうだ。そういえば、この海のシーンでこんなやり取りがあったんですよ。


杏平「"あのときのいのち"って口の中で何回もいってごらん」
ゆきアノトキノイノチ、アノトキノイノチ...」
...
杏平「何度も言ってるとね、プロレスラーの名前になるの!」
ゆきアントキノイノチ!」


ってなんだこの茶番!あまりにくだらなくてすごい吹きだしてしまいました(笑)
「この作品のタイトル、絶対猪木の名前意識してるだろ...」と思ってたけど、まさかそれを作中でネタにするとは予想してませんでした。いやまぁストーリー全体が暗かっただけに、こういうホッとできるくだらないやり取りがあるのはいいと思います。さらにゆきは「元気ですかー」という言葉を海に向かって叫びだすあたりもなかなかキュンキュンとさせるポイントなのですが、それはまあこの作品に興味のある人に見ていただければそれでよいのでくわしくは割愛します。


せっかくいい話をしてたのに話が逸れてしまいましたが、あのシーンから導かれその先の展開として描かれるべきは杏平とゆきが生きていく未来であって、ゆきが死んでしまった世界じゃないと思うんですよ、絶対に。生きる目的を見つけた二人が生きていく、そこを描かずに安易に泣けそうな展開にもっていくその浅ましさには腹が立ってしょうがなかったです。


っていうか書いてたらまた腹が立ってきた!


公式サイトはこちら