雑誌「月刊ハテナ」が廃刊になり、出版社を辞めることになったじり貧OL・ハナメ(麻生久美子)。人生をやり直そうと身の回りの荷物を処分した矢先、衝撃の事実が発覚! ひょんなことから“電球”と名乗る胡散臭い骨董屋の店主(風間杜夫)と出会い、いつしか骨董の魅力にはまっていく…。『亀は意外と速く泳ぐ』、『転々』の三木聡監督最新作。
『インスタント沼』作品情報 | cinemacafe.net
TOHOシネマズ川崎にて。
笑って笑ってちょっとしんみりしてまた笑って...と、絶え間なく感情を揺さぶられました。
開始早々のハナメが起きるシーンのテンポの良さはもはや他に類するシーンを見たことがないと思えるほど新鮮でものすごく惹かれたし、シオシオミロという素材の面白さやファラオの占い機を探すくだりのくだらなさ、水道を使ったテンションを上げる方法やおでんのタネを決めるマシーンなどなど、相変わらずどうしたらこんなことが思いつくのか教えて欲しくなるようなネタがたくさん詰め込まれたいかにも三木監督らしい作品でした。
ちなみにわたしが一番好きなのはハナメがフルフェイスのお面を被って窓辺にたたずむシーンでして、この作品の中では比較的穏やかなシーンなのですが盛大に吹き出してしまいました。そのたたずむようすを見ておどろく温水さんというのもなかなかよかったです。
ちなみに隣の席の人は「よろしくおねがい島津藩」というところでポップコーンをふきだして笑っていました。
それにしても麻生久美子はすごくよかった。
始めた骨董店を黒を基調に作り直した時の格好がものすごく似合っていたし、編集者として駆け出しの頃に雨夜と初めて会うシーンがあるのですがそのシーンでのめがね姿+ちょっと上目遣いにはもうクラクラしてしまいました。あのシーンは人類の宝として今後200年くらいどこか多くの人の目に止まる場所に奉納すべきものだと思います。あれを観ていない人はまちがいなく人生の20%くらいは損しています。
というのは冗談ですが、時効警察を見たときにも思ったのですが、たぶん三木監督は麻生久美子が好きなんだろうなあと思うくらい作品全体に彼女をかわいく映そうという意思が感じられました。電球に甘えるハナメの仕草なんてもうたまんないなあと思ったけど、もしかしたらあれは三木監督自身がそうされたいという願望なのかも知れません。
そうかんがえると、電球というキャラクターそのものが監督自身を投影したものなんじゃないかという気がしてきてそういう視点で見るとまた違って見れて面白いと思います。
と、全体的にはゆるく笑える作品なのですが、「インスタント沼」というタイトルにこめられた思い、「意地や見栄、プライドというおもりの重さでずぶずぶと沼に沈むように沈んでいく人々」、というのは何だか痛いとこを付かれた気分になりました。さんざん笑わせておきながらさらりとこのようなメッセージを突きつける油断ならない作品でもあったことを忘れないように書き記しておきます。
どうしても見たい作品でしたので鑑賞できて本当によかったです。
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