「老人と海」読んだよ

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

カジキと闘う孤独な老漁師サンチャゴの物語。戦いの末捕まえたカジキは、船に引き上げる事が出来ず、曳航して港に戻るまでにサメ(アオザメ)に食われて、獲物は失われてしまった。

老人と海 - Wikipedia

Wikipediaからあらすじを抜き出して気付いたのですが、本書の内容はこのあらすじでほぼすべてと言っても過言ではありません。
本書は、大きな魚を釣り上げるために昼夜闘い続けるシーンと、釣り上げて港へ帰る途中にサメに襲われてしまいそのサメと闘いながら帰港を目指すシーンの大きく二つに分けられるのですが、内容としてはこのあらすじがすべて。魚を釣り上げたので持って帰ろうとしたらサメに食べられちゃったというそれだけなのです。
たしかに本書も文庫本で200ページもないくらい短いのですが、それでも作品のストーリーを  50文字程度に要約できる簡潔さはなかなか他の作品ではお目にかかったことはなくて、主題を徹底的にしぼって描くことに対する執念というか信念にはただならぬものを感じます。


では短くて簡潔だから描写もあっさりしているのかというとそんなことはなくて、もうものすごく表現が濃厚でくどいんですよ。まるでとんこつラーメンのように、読後はもちろん読んでいる最中も胸焼けしてしまいそうなくらいギトギトとした文章が紡がれていてなかなか読みごたえがあります。
そしてここがすごいなと感じたのですが、次の展開が気になって読む手が止まらないのです。サンチャゴは次にどうするのか。それが気になってしまって続きを読まずにはいられないのです。わたしはこの本を読む前におおよそのあらすじを知っていて、魚がサンチャゴに釣り上げられてしまうことは知っていたのですが、その結末を知っていてなお続きをよみたくてしょうがないのです。
この力強さというか惹きつける力の強さ、強引さは本当にすごいなと感心してしまいました。


とまあ、とてもおもしろかったのですが、これってあちこちで言われているように男性受けはしそうですが女性にはあまり受けそうにない作品だよなーとわたしもすごく感じました。
大きな魚を釣り上げるところは男女問わずどんな読み手も興奮をおぼえるでしょうが、結局港に帰ったときには釣り上げた魚は跡形なくなくなってしまったことをどう受け止めるのかというところが男女で評価が分かれるところではないかと思うのです。
「釣り上げた=魚との闘いに勝った」という事実だけでもそれがすばらしいことだとわたしは評価したいと思うのですが、一方で、結果として何も利益を得られていないという事実を重視すればこんなにつまらない話はないわけです。釣り上げたことを「男のロマン*1として評価できないとすれば、結局この話はなんだったんだっていう感想をもって当然なんですよね。



とてもおもしろかったのですが、上でも書いたとおり胸焼けしそうなくらいとても濃厚でしたのでしばらくは再読せずに本棚の奥に隠しておこうと思います。

*1:古い言い回しで恥ずかしい