連続して起こる放火事件と、現場近くに必ず残される奇妙な落書き。その謎は、幸せそうに暮らす奥野一家の24年前の哀しい過去へと繋がっていく…。遺伝子研究をする兄・泉水(加瀬亮)、落書き消しをする弟・春(岡田将生)、そして病いと闘う父(小日向文世)――強い絆で結ばれた家族の決断とは? 常識を超えた大きな愛に心で泣く、感動ミステリー。伊坂幸太郎の大ベストセラー同名小説が原作にした、家族の愛と謎の物語。アスミック・エースとROBOTによる、初の共同企画&製作作品。
『重力ピエロ』作品情報 | cinemacafe.net
MOVIX宇都宮にて。
先日鑑賞したフィッシュストーリーに引き続き、伊坂幸太郎原作の映画化作品。来月13日から新宿のバルト9で公開される「ラッシュライフ」も加えると今年だけで計3本が映画化/公開されるということからも、ものすごい人気ぶりがうかがえます。伊坂さんの作品は、2006年以降、毎年1本は映画化されていますので、作品の人気の高さと映像化への適正は不動と言っても過言ではありません。もちろん映画を撮った人の力量というのも当然あるのでしょうが、伊坂作品は映画にしてもおもしろいということは原作ファンにも映画ファンにも広く認知されつつあるのではないでしょうか。
本作の一番の特徴は原作の雰囲気をものすごい濃度で再現している点にあります。映画自体は原作とまったく同じというわけではなく、例えば泉水が社会人ではなく大学院生だったりと細かい違いはいくつかあるのですが、わたしが原作を読んだ時に想像していた人物像や舞台となった場所の空気、匂いがとてもよく再現されていることにとても感心してしまいました。
原作に対する敬意というか、大事にしようという空気がとても感じられる作品であり、その点は非常によかったです。
わたしは家族の形とか在り方というものにとても興味があって、ふとした瞬間に「どういうものが家族なんだろう」なんてことを延々と考えてみたりしています。血がつながっていれば家族なのだろうか、一緒に住んでいれば家族なのだろうか、そもそも家族なんてものを定義することは出来ないのではないかとか。
あーだこーだといろいろと考え抜いた挙句、結局は血縁と同居が家族の基本形だというとてもクラシカルな答えにたどり着いてしまうことが多いのですが、でも決してそれだけじゃないはずだという気持ちも心のどこかにあって自分自身が納得出来るような答えを出したことは一度もありません。ですから、わたしは家族の在り方を描いた作品にはめっぽう目がなくて、そういったテーマだというだけでいつも飛びついてしまいます。
本作では、一見普通に見える家族が抱えていたとても重苦しい問題、それは彼らのつながりの根幹を揺るがすほどの大きな大きな問題なのですが、それを乗り越えてなお結びつくことが出来る絆をもつ家族の形のひとつをこの作品は描いています。作品の紹介には感動ミステリーとありますが、実際には感動というのとはちょっと違う印象を受けました。
深刻なことほど陽気に話す、つまりは自らにかかっている重力を感じさせないように演技を見せるピエロのように立ち振る舞うことの難しさと優しさと大切さ。話す内容が深刻であればあるほどそのように振舞うことが大事なのだろうし、そのくらいに思いやれる間柄こそが家族であることのひとつの条件なのかも知れないなと感じました。
原作が好きな人にもお奨めしたい作品です。
ちなみに一年前に書いた本の感想はこちら。ずいぶんあっさりしてるなあ。
[追記]
上記のとおり、家族の形をテーマにした作品が大好きなのですが、その中でもとりわけ瀬尾まい子さんの作品が大好きなのでここでお奨めしておきます。
- 作者: 瀬尾まいこ
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