「ミルク」見たよ


恋人のスコット・スミスジェームズ・フランコ)と共に、N.Y.からサンフランシスコにやって来たハーヴィー・ミルク(ショーン・ペン)は、同性愛者たちが集まる中心地・カストロ通りで小さな写真店を開く。そこでミルクは、同性愛者に対する平等な権利と機会を求め、市民権運動の活動家として行動を起こす。ミルクは、クリーブ・ジョーンズ(エミール・ハーシュ)をはじめとする多くの若者から支持を得て、見事、市政執行委員に当選、全米で初めて同性愛者であることを公言して公職に就くことになった。しかし、就任して1年も経たないうちに、ミルクをある悲劇が襲う――。1970年代に同性愛者の権利を獲得するために命を捧げた政治活動家、ハーヴィー・ミルクの半生を描く。オスカー俳優ショーン・ペンがミルクを演じる。

『ミルク』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。
本作は同性愛者の地位を確立するために生きた一人の男性、ハーヴィー・ミルクの物語ですが、観ているうちに、わたしがマジョリティであるということに胡坐をかいて生きていることを公然と指摘というかダメだしをされているようなそんな居心地の悪さを感じさせる挑発的な作品でした。もちろん嫌いとかそういう意味ではなく、この演出はすごいと思うし、ものすごく感心してしまいました。
今まで自分が差別的な人間なのかどうかなんてことは考えたこともなくて、どちらかというと他人を容易に差別するような狭量ではないはずだということを根拠もなくさも当然のように考えていたのですが、実はものすごい偏見をもっていることに気付かされた私はなんともいえない気持ちになってしまいました。


この作品にはノーマルな男女の恋人同士と同じかそれ以上積極的に、路上やパーティなどどこでも抱き合いキスをしているゲイの人々の映像が映し出されます。男女のそれは視点を男性側にとらえて見ていれば特に不快感を感じることはないのですが、これが男性同士だとどうも直視出来ない。頭の中では「男 vs 女が男 vs 男になっただけ」というのは分かっているのですが、もうびっくりするくらい見ることを拒否してしまうのです。何となくおじいちゃんとおばあちゃんのキスシーンを観たときの気まずさに近いように感じるのですが、とにかく思わず目を背けてしまうのです。頑張ってみようとするとそれだけでものすごくテンションが下がってしまう始末。
自分がこれほどゲイの人に対して偏見をもっていたことは予想していた以上でした...。


けれど、じゃあミルクや彼の周囲人々の存在そのものにも嫌悪感を感じたのかと言えば全然そんなことはなくて、本当に普段は他の人と何一つ変わらない生活を送っている彼らの様子を見ているとなぜ嫌う必要があるのかまったく分からなくなってくるのです。
きっと、ミルクはこんなふうに身近にいる人たちから自分たちが決して特異な存在ではないという理解をしてもらえればいつか自分たちの存在が世間に受け入れてもらえるはずだということを知っていたのだろうけれど、でも差別を受けていながらにしてそう考え、さらに実行出来るその強さには感服せずにはいられません。


というわけで、観終えての感想は「参りました」というのがせいいっぱいです。


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