「贅沢なお産」読んだよ

贅沢なお産 (新潮文庫)

贅沢なお産 (新潮文庫)

買物にも、旅行にも、恋愛にも飽きた人気漫画家(36歳)が選んだ道は・・・・・・「自宅出産」だった!漫画とエッセイで綴る、お気楽&感動の妊婦ライフ

買い物と夜遊びに忙しかった著者が、さまざまな体験を経て「自宅出産」を選択、そして実行するまでの経過をエッセイ風にまとめました。陣痛促進剤は使わない、会陰切開もしない、そして自宅で出産……お金はさほどかかっていなくても、これほど贅沢な出産はほかにありません。これから出産する人も、2人目、3人目を考えている人もみんな必読! 著者による、妊婦ライフを描いたほのぼのエッセイコミックも収録したお得な1冊です。

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子どもが出来てから知ったことでとても驚いたのは、出産や育児にはさまざまな手段がありそれらの一つ一つがまるで派閥のように機能しているというこです。ここではあえて派閥という緩い呼び方をしましたが、場合によっては派閥ではなく信仰と呼んでも差し支えないほどに信じる/信じないということが対立の原因になったりもするのです。
例えば本書でも取り上げている「自宅で産むのか、病院で産むのか」というのもそうですが、胎教をする/しないと言った妊娠中に何をするのかといったことや無痛分娩や自然分娩といった産み方に関するもの、はたまた産んでからは母乳とミルクどちらで育てるのかということなど、数え上げたらきりがないほどにさまざまな選択肢があることに最初は誰もがおどろくはずです。


でまあ、基本的にはどういう選択をしたとしても子どもというのはそれなりに育つし、どれが正しくてどれが間違っているとは言えないのではないかと思うのですが、一方で「この方法以外は認めない」という原理主義者も稀におりましてそのような人たちと会話をすると大変疲れることがあります。
わたしが一番良く見かけるのは母乳原理主義者でして、年寄りほど「おっぱい最高!!」という原理主義者な人が多いです。わたしもおっぱいは好きですが、おっぱい原理主義者は大嫌いです。例えば母乳原理主義者は母乳だけで育てることを「完母」と呼び、ミルクだけで育てたり混合(母乳とミルクのあわせ技)したケースとあえて区別して完母がいかにもすばらしいことのように吹聴したりします(完母とググればいっぱいそういう人の姿を見つけられます)。ですが、そんなのは子どもや母体の具合、あとは誰が面倒を見るのかなど状況を考慮して最適なものを選択すればよいだけでどちらが優れていると一意に決められることじゃないのに、わざわざ優劣を付ける人の醜悪さには唾棄したくなるのです。



本書は36歳で子どもを産んだ人の話であり、ここにもさまざまな派閥/信仰を見ることが出来、そしてその大半はわたしの意見とはまったく正反対の意見ばかりでした。ですが本書を読んで感じたのは上に書いたような不愉快さではなく、好感といってもよいほどの好印象を受けたのです。その理由について考えてみたのですが、著者は自身の選択を書くにあたってまったく押し付けがましくなく、でも本人が感じたメリットはとても細かく丁寧に記載しており、とても素直にその意見を受け入れることが出来ました。
例えばわたしは自宅出産よりも病院での出産が安全で信頼できると思っているし、ホメオパシーと聞くとどうしても安全さよりも怪しさを感じてしまうのですが、本書のように自身の選択のひとつひとつを淡々と説明されると否定的な印象はまったく受けません。


なぜそうなのかということについては、著者ご本人が自身の選択に自信をもっている/他人と比べる気がない、つまり他者との間に優劣をつける必要がないことがそう感じさせるのではないかと感じましたが、実際どうだかわかりません。
とにかくとても楽しく読めたので満足しました。