- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/03/25
- メディア: 文庫
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大学三回生の春までの二年間を思い返してみて、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。―『太陽の塔』(第十五回日本ファンタジーノベル大賞受賞作)から一年。無意味で楽しい毎日じゃないですか。何が不満なんです?再びトンチキな大学生の妄想が京都の街を駆け巡る。
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「夜は短し歩けよ乙女」以来、2冊目となる森見さんの著書でしたがとてもユニークでおもしろい作品でした。
物語の始まりとおしまい、そしていくつかのチェックポイントを明確に定めておき、そこ以外を変えて複数の物語を紡ぐというのがこんなにおもしろい話になるとは想像もしていませんでした。こういう構成の小説は初めて読んだので、とても新鮮な気分になりました。
この本を読んでみて感じたのは「実は人生ってこんなもんなんじゃないかな?」ということです。
わたしは、毎日目の前にあるさまざまな選択の中から自分のほしいものを選び取って過ごしているわけですが「あの時こっちを選んでたらな...」ということはよくあります。後悔というほどではありませんし、こういうことに「もしも」は存在しないというのは承知していますが、それでも自分が選び取らなかったパラレルワールドの行く末に思いを馳せてしまうことはわたしにとっては決して珍しいことではありません。
けれど、本書を読んで思ったのは「結局どれを選んでも行きつく場所や手にするものは変わらないんじゃないか」ということでした。
何を選んでも、どれを手にしても、自分が行きつく先というのはそれほど変わらないんじゃないかなということなんですよ。
ただ、わたしは運命論者ではありません。
人生すべてがもう決まっているということを言いたいわけではありませんし、むしろ人生が大きく変わってしまう選択というのもやはりあると信じています。ですが、そんなターニングポイントとなるような場面が人生にそれほどたくさんあるとは思えません。人生にはたくさんの選択があるけれど、その大半がどれを選び取っても同じ結果に結びつくくらいの瑣末なものなんじゃないかということです。
そんなふうに考えると、日常に転がる細かいことであれこれ悩むのはバカらしくなってきました。
ちなみに、羽貫さんと樋口さんが「夜は短し歩けよ乙女」にも出ていたキャラクターだったことには読み終えてから気付きました。
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