「恋のトビラ」読んだよ

読むだけで、恋したくなる。今、いちばん読みたい作家5人があなたのために描いた宝石のようなラブストーリー。

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学生の頃はそうでもなかったのですが、結婚してからはラブストーリーというものにさほど惹かれなくなりました。いろいろと理由はあるでしょうが、ラブストーリーで描かれる対象が10代から20代が多いことを考えれば単にわたしがその読者対象からはずれただけのことであり当然のことなのかも知れません。
本作はタイトルからしてラブストーリーまっしぐらな作品なので普段であれば手にすることはないのですが、島本理生さんや森絵都さんといった方々が著者として名を連ねていたために思い切って手に取ってみました。本書は石田衣良さん、角田光代さん、嶽本野ばらさん、そして前述したお二方が書かれた短編集ですが、どの作品も女性視点でのさまざまな「好き」が描かれていておもしろかったです。

ドラゴン&フラワー(石田衣良)

「結局、女性って真面目で浮気しなそうな人よりも浮気癖があるけどもてる人の方がいいんでしょ?」的な偏見を生みそうな物語。正直全然面白くなかったし、読書中も読後も不愉快な気分しか残りませんでした。

卒業旅行(角田光代)

あぁぁぁ。まさに自分を観ているような非活動的な女の子のお話で、読んでる最中に頭をかきむしりたくなるほど心が乱されました。あまりに自分自身に重なり過ぎたので思いっきり感情移入して読む羽目になりました。
異国での出会いというのはどこか運命的というか、勢いに流されがちだし、そういった側面にはスポットを当てて盛り上げようとするケースが多いのですが、本書はあえてそういった部分には目もくれず、「もしかしたら好きかも知れない」という程度の気持ちの機微を表現することに腐心していたのが印象的でした。
これはかなりおもしろかったです。

Flying Guts(嶽本野ばら)

奥手な女性が好きな人と仲良くなるというありがちな話を膨らませている点は面白いのですが、いまいち惹かれない作品でした。


初恋(島本理生)

「昔好きだった人を思い出すをふと思い出す」という形態で語られる物語ですが、島本さんの語る話は痛みを伴うものが多くて読むだけでとても疲弊します。好きな人の抱えている痛みを受け止めたい、もしくは共有したり一時的でも癒したいというのは分からなくもないのですがでもなかなかしんどい話なのです。


痛みを伴う切実な好きという気持ちが伝わってくる作品でした。

本物の恋(森絵都)

人を好きになるタイミングってよくわからなくて、例えばスポーツをしている姿がかっこよかったとか、一心不乱に読書している姿に惚れたとかさまざまあると思いますが、そういうケースばかりではなく、逆にかっこ悪い姿を見せられたからこそ好きになってしまうということもあるようです。


そんな不思議な感情を自然に理解させてくれる素敵な物語でした。