吉祥天女


昭和45年春、金沢――。
春日高校「能楽クラブ」に所属する、快活な女子高生、麻井由似子(本仮屋ユイカ)のクラスに、不思議な魅力を持つ転校生がやってくる。その少女の名は、叶小夜子(鈴木杏)。5歳の頃に親戚の家に預けられて以来、この地を離れて暮らしていたが、12年ぶりに実家に戻ってきたのだ。長くツヤのある黒髪、吸い込まれるような瞳......。クラスメイトたちは、たちまち小夜子の虜になる。もちろん由似子も。だが、遠野涼(勝地涼)だけは、小夜子に見つめられると、ただならぬ気配を感じ、教室を出て行く。
小夜子は、"天衣神社"をはじめ、このあたりの土地のほとんどを所有する名家、叶家の娘。下校時になると、書生の小川雪政(津田寛治)が車で迎えに来る、いわば"お姫様"のような存在である。その姿を涼と見ていた、新興の「遠野建設」の息子・遠野暁(深水元基)は、小夜子と政略結婚させられそうになっていると語る。涼と暁は義理の兄弟。7年前に交通事故で両親を亡くした涼は、妹の水絵とともに養子として、親戚の遠野家に引き取られたのだ。暁の父・一郎は、叶家が所有する土地に春日高校の中等部を建設しようとしているが、叶家は借金まみれにもかかわらず買収に応じない。そこで、一郎の妹であり、暁の叔母である浮子が、小夜子と暁の縁組を企て、小夜子を実家に呼び戻したというわけだ。浮子は、小夜子の兄・泰之と結婚し叶家に嫁いだが、すぐに未亡人となり、今は小夜子の祖母・叶あき(江波杏子)の介護をしているのだった。

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7440

MOVIX宇都宮にて。
抑揚が少ないと言うか盛り上がりも盛り下がりもほぼ感じられない淡々とした作品でした。
ストーリーが淡々としていたのかというと決してそうではなく、話の内容だけを追うとかなりエキサイティングな流れになっています。あまりにあっさりと人が死に過ぎです。では、なんでそう感じたのかと思い返してみると、結局はキャスティングがイマイチ過ぎるために作品に入り込めなかったのが一番の原因かなという結論に達しました。


キャスティングといっても出演者自体に不満があるわけではありません。今作の出演者は皆大好きな人ばかりですが、その配役にとても不満があるのです。


まず小夜子の「見た人誰もが憧れてしまうくらい美しく魅力的な人」という役どころを杏ちゃんが演じるっていうのがそもそも無理があり過ぎです。彼女はそういう美人ではありません。どちらかと言うと愛嬌があってかわいいというキャラクターなので、「花とアリス」の花みたいな感じの役柄がとてもフィットします。
あとは由似子の存在の必要性が全く理解出来ませんでした。しかもその役に本仮屋さんを起用してしまったために、本来必要かどうか怪しいキャラクターがクローズアップされるという状況がとても奇妙に感じられました。
物語を楽しむ前提条件といってもいいくらい大事なキャスティングが私の感覚と大きくずれていたのが、ストーリーを楽しめなかった一因です。


また、この作品では徹底的に演出が抑えられています。そのため、よく言えば自然体、悪く言えば能面の表面のような凹凸のないシーンがこれでもかと続きます。無駄に演出が激しいのは苦手ですが、あまりに演出が少ないとこんなにも盛り上がれないのかとびっくりしました。これだけサスペンスドラマな展開なのに、全然興奮も緊張もしないのは異常です。やはりある程度は演出があった方がいいのだと心底実感しました。


映像の美しさ、久しぶりの杏ちゃんなどそれなりに見所はありますが、原作や出演者に興味がある人以外はあまりオススメ出来ません。


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