「マルチクラウドネットワークの教科書」読んだ

本書はマルチクラウドにおける、現代的なネットワーク構築・設計を解説する書籍です。ネットワークの観点からマルチクラウドの優位性や課題を紹介します。また、構成例や接続方法はもちろん、デザインパターンや運用方法まで解説します。

マルチクラウドネットワークの教科書 耐障害性と冗長性を実現するデザインパターン 電子書籍|翔泳社の本

2年前くらいからAWSを触り始めたのですが、去年は仕事でOracle Cloud を触る機会があり、さらにGoogle Cloudのカンファレンスに参加したり年末には資格(ACE)を取得したりといろいろなクラウドサービスに関わる機会が増えてきました。クラウドサービスそれぞれに特徴があってとてもおもしろかったのですが、いろいろなクラウドサービスを触った感想としては「クラウドサービスの基本的な機能はどこも大体同じ」でした。ネットワーク設計に関する方針だとか設定可能な内容にはそれぞれ差異はあるのですが、基本的な機能、例えばネットワークを定義(VPC)するだとか仮想マシン(EC2/Compute Engine)を作るだとか、あとは利用者の権限管理(IAM)やオブジェクトストレージ(S3/ObjectStorage)などはどのサービスでも提供されていてできることに大きな違いはありません。使い勝手がちょっと違うとか安いとか高いとか、機能にちょっとした差異がある程度です。

となると、どのクラウドサービスを選ぶのかという基準としては機能的な差異よりも意思決定者の好みだとか技術者のスキルセットだとかコストのほうがよほど効いてくると言えます(個人開発はまた違いますが)。今はAWSの一強という状況が続いてますが、マネージドサービスはあまり使わないのであればどのクラウドサービスを選んでもさほど差はないとも考えられるのです。

さらに今年の初めくらいにGoogle が他社クラウドサービスへのデータ移行に関する転送量を無料にするという決定をしたことがニュースになっていましたが、AWSもそれに追随して無料にしました。

aws.amazon.com

Googleの対応が圧力になったのか流れにのったのかは分かりませんが、データ転送にかかるコストが足かせにならないのであればこれからはクラウドサービスを気軽に変える機会が増えるだろうしGoogleAWSの対応はそれを想定しての対応なんだろうなと思うし、コストなどをたてにやめにくくして印象を悪くするくらいならこういう対応の方がよほど印象がいいです。


という話はさておいて、そうやってユーザーがあっちのクラウドサービスを利用したりこっちのクラウドサービスを利用したりして複数のクラウドサービスに関する知見を得た結果どうなるのかというとそれぞれのクラウドサービスの気に入ったところだけを使う、つまり複数のクラウドサービスを同時に使うマルチクラウドが増えるのではないか?というと考えられます。自分はマルチクラウドは好きじゃないというか全部まとめてひとつのクラウドサービスにまとまっていたほうがいいじゃないと思うのですが、何となく世の流れとしてマルチクラウドになるんじゃないかなー、嫌だなーと、やりたくないなーと思ったのでその嫌な気持ちを少しでも抑えるべく本書を手に取ってみました。話の前置きが長い!

本書はマルチクラウドを構成するための各クラウドサービスの要素サービス(VPCとか専用線サービスとか)に関する基本的な知見について整理して説明をしたうえで、具体的なさまざまな構成を実現するためのネットワーク構成のパターンを紹介しています。著者はDirectConnect(AWS専用線サービス)のサービス開始当初には既にAWSに関わっていたというだけあってクラウドサービスのたどった歴史的な経緯だとか出来事についてもちょこちょこ書いていてそういった小話を読むだけでもとてもおもしろかったです。

DirectConnect周りの話が多かった3章は個人的にはあまりピンとこなかったというか難しすぎてよくわからなかったので半分以上読み飛ばしましたが、全体的には一歩一歩丁寧に説明されいてとても分かりやすいよい本でした。内容としては AWS / GCP / Azure を対象とした本なんですが、すべてのCSPについて知っている必要はなくてAWSについてそこそこ知っていれば普通に読めましたし、上でも書いたとおりAWSについてはさまざまな経緯も含めて書いてあったのでAWS初学者にはとてもいい本なんじゃないかなと思いました。自分はとても参考になりました。