今週のお題は「方言」。
わたしは生まれも育ちも秋田でして18年間をずっと秋田で過ごしました。
秋田は東北の中でもわりと訛りの強い地域だと思っていますが、わたしが住んでいた男鹿市は秋田県の中でもとくに方言のきつい場所でした。どのくらい言葉が訛っていたのかというと、他の市町村出身の人にプークスクスと笑われる程度には訛っていたと記憶しています。
中学まではよかったんです。みんな同じ市内、同じ学区に住む人同士なので訛ってて当然だしむしろあえて標準語を使おうものなら「あいつかっこつけやがって」みたいな信じられない理由で金髪をキャノン砲みたいに固めた先輩たちに呼び出されて雪に覆われたグラウンドでブレーンバスターをされたりします(実話)。
あ、ブレーンバスターされたのはわたしじゃないですよ。
部活帰りに教科書を取りに学校に戻ったら偶然見かけただけなんですが、まさかマットも何もない場所でブレーンバスターをキメるバカがいるとは思ってなくてなんだか殺人現場を目撃してしまったようないたたまれない気分になりました。雪の下は普通に硬いからね...。
田舎ヤンキーはびっくりするくらい何も考えてないし、後先考えずに欲望に素直に行動するのでマジで怖いです。
すいません、話がそれました。
方言ですよね。
中学のときはみんな訛ってたから問題なし!っていう話でしたが、高校に行くと状況は一変します。
わたしが高校生だったのは1993年4月から1996年3月ですが、当時の秋田県は3学区制でした。
調べてみると2005年には1学区制になって県内どこの高校にでも入れるようになったようですが、昔は県北、中央、県南の3学区に分かれていて、わたしが住んでいた男鹿市は中央という学区でした。中央はその名のとおり秋田県の中央部分に位置する市町村が含まれた学区でして、秋田県で一番大きな市である秋田市を含む学区です。
わたしが入学した高校は秋田市の高校ではなかったのですが、それでもクラスの半分くらいは秋田市方面から通っている人が多かったと思います。
さて。秋田県の人は東北の中でも訛りがつよいと最初に書いてしまいましたが、実はこれは正しい表現ではありません。「秋田市以外の秋田県の人は東北の中でも訛りがつよい」と書いたほうがより正確ですし、もっと正確に表現するならば「秋田市の人はほとんど訛っていないけどいとっとが住んでた男鹿市の人は東北の中でも訛りがつよい」となります。
もちろん秋田市の人がまったく訛っていないというわけではないのですが、わが男鹿市に比べたら訛ってないも同然なのです。
高校に入ってしばらく経つと、言葉のアクセントがおかしいという指摘を受けることがありました。悪意なくただ教えてくれる人もいましたが、「訛ってるから何言ってるかわかんない」とバカにされたり笑われたことは何度となくありました。
たしかに訛ってるという自覚はあったけれど、自分の自然と発する言葉をバカにされるのは結構つらくてそういう人がいる場所ではあまりしゃべらないようになってしまった時期もありました。いま思えばナイーブだなと笑ってしまいそうになるのですが、でも冷静に考えれば言葉をバカにされるのってやっぱりつらかったです。
その後は友だちに恵まれたおかげで訛っててもいいじゃんと開き直りつつ、でも直せるところは直していこうというスタンスで少しずつ言葉を矯正してなんとか楽しい高校生活を送ることができました。
大学に入ってからはかなり頑張って標準語を身に着けたのでいまでは初対面でわたしが秋田出身であることを見抜ける人はまずいません。一度だけ東京駅にいるときに実家からかかってきた電話に出てしまい、親と方言トークをしたのを一緒にいた人に聞かれてバレたことがありますがそれ以外は完璧です。
いとっと > もしもし?急ぎの用事?
いとっと母> あれ?いまそどにいだが?
いとっと > んだ。いましごどでそどさ来でら
いとっと母> あいしかだね。んだばあとでかげなおすな
いとっと > 何時なるがわがらねがらかえっだら電話すらな
いとっと母> へばまんずな(がちゃ)
電話を切ったら横にいた同行者が「あ、あれ?いとっとさんってどこの人なんですか?」と言われたのもいい思い出ですね...。
そんなわけで方言に対する劣等感はだいぶ克服したつもりなんですが、先日テレビを見ていてすごいハッとしたシーンがあって、青森のおいしいものを取材するという番組だったと思うのですがあるお店に行ったときにお店の人が普通に話しているその下に字幕が出てたんですよ、字幕が!
青森と秋田はわりと言葉が似てるのでわたしは字幕なしでもその人が何を言っているのかは大体わかったのですが、テレビではその人の発言には全部字幕が付けられていてすごくショックでした。もちろん悪気がないのはわかるのですが、なんか「お前の言ってることわかんねえよ」と言われた高校時代を思い出してしまってすごく悲しい気持ちになりました。
いやたしかに東北の言葉は地元の人以外にはわかんないんでしょうけどね...。