
- 作者: 北林 一光
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/12/25
- メディア: 文庫
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おまえはいったいなんなんだ?なぜここにいる?長野県安曇野。半年前に失踪した妻の頭蓋骨が見つかり、三井周平は絶望していた。しかし、なぜ、あれほど用心深かった妻が、山で遭難し、しかも現場と思われていた場所から、遙かに離れた場所で発見されたのか?…数日後、沢で写真を撮っていた女性が、一瞬目を離した隙に行方不明になる事件が発生。妻の事故との類似点に気づいた周平が捜索を手伝うことになる。しかし、それは、恐怖の連鎖のきっかけにすぎなかった!人間をあざ笑うように、次々と起こる惨劇。山に潜む、かつてない凶悪なモンスターとは―。
http://www.amazon.co.jp/dp/4048738194
山で次々と起きる行方不明事件を描いた作品でしたが、たいへんおもしろかったです。
まるで神隠しのように忽然と人が消えてしまうという展開はとてもスリリングそれだけでも興味を惹きつけるのですが、その消えてしまう部分の描き方がとにかくすばらしいのです。
例えるならば、なんてことのない日常を過ごしているときに不意に現れる深く掘られた落とし穴。その穴に足を踏み込むまでまったく気づくことはできず、気づいた時にはもうなすすべなく落ちてその生を終えることになる理不尽さ。
このような日常の中にぽっかりと穴が口を開けて誰かが落ちるのを待っているというのを描いた作品がわたしは結構好きで、たとえば映画「ラブリーボーン」にもそんなシーンがあってとても印象に残っています。
そしてその山に潜んだ脅威の正体だけでなく、それが出現するに至った経緯までしっかりと理由づけがなされていたのもすごくよかったです。読み終えて内容が100%腑に落ちた状態というのはとても気持ちがいいです。
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