「J・エドガー」見たよ


アメリカの法の番人として君臨したJ・エドガーは、就任当時のカルビン・クーリッジからリチャード・ニクソンまで8代の米国大統領たちに仕え、FBIをいまのような影響力を持つ巨大な組織へと発展させた。その巨大過ぎる権力から歴代の米国大統領でさえ畏怖と非難と崇拝の対象だった。しかしフーバーには、そのイメージもキャリアも人生さえも失いかねない人知れぬ秘密があったのだった…。世界で最も恐れられ、アメリカを支配した男、J・エドガーの禁断の半生がついにベールを脱ぐ。

『J・エドガー』作品情報 | cinemacafe.net


MOVIX宇都宮で観てきました。

FBIの長官を48年続けたというジョン・エドガー・フーバーの半生を描いた作品でしたが、歴史に疎いためにところどころところ理解が追いつかなかったものの、それでも十二分に楽しめる作品でした。ジョンの「世間から見た成功者としての姿」と「自身の性癖すら明かすことができず、さらに母親を心のよりどころとして生きる子どものような弱さを抱えた姿」を描いていたのですが、「自分から見える自分と他者から見える自分の乖離」が伝わってきてそこにものすごいリアリティを感じました。

自分とは別世界に住む遠い存在のように思えた人でも、結局は同じ人間なんだと思えるところがすごくよかったです。


本作は老いたジョンが、自身の半生を本に残そうとライターに語って聞かせることで物語が進んでいきます。そのため、描かれているシーンの時間はその時々でくるくるとその位置を変え続け、時に若かりし頃のフーバーを、時に老いさばらえた彼を映し出していて、その現在と過去を分け隔てなくシームレスに紡いでいく様子はテンポよく感じられてよかったかなと。


科学捜査が無かった時代にその必要性に目を付けることでFBIを大きな組織へと変えていったというジョンはたしかにすばらしいと感じましたし、現在のID制度や秩序を保つためのさまざまな施策の元を作り上げたその信念には惹きつけられるものを感じたのです。

ですが、一方では「秩序ある社会の実現」というもっともらしい正義を掲げることで自らの独善とも言える行為を正当化していく彼のやり口には一抹の不安というか怖さみたいなものも感じました。そしてそれは年老いてもなお衰えることはなく、むしろ老いても権力に執着する老害としての姿をさらすことになるのです。
周囲からの引退のすすめにも応じない彼の姿を見ていると、引き際を知るというのはどんな人にとってもむずかしいことなんだなと思わずにはいられませんでした。


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