「ガタカ」見たよ

ガタカ [DVD]

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出生前の遺伝子操作により、生まれながらに優れた知能と体力と外見を持った「適正者」と、「欠陥」のある遺伝子を持ちうる自然出産により産まれた「不適正者」との間で厳格な社会的差別がある近未来。

「不適正者」として産まれた主人公ヴィンセントは、子供の頃から「適正者」のみに資格が与えられている宇宙飛行士になる事を夢見ていた。

ガタカ - Wikipedia

(注意)
本エントリーは結末に触れている部分もあるので、未見の方はご注意ください。


本作品は以前このブログで「映画を一本おすすめしてください」というエントリーで募集した際に教えていただきました。ありがとうございます。


本作は、遺伝子工学の発達によって遺伝子レベルで人間の能力の優劣を判別できるようになった近未来を舞台とした物語なのですが、たいへんおもしろかったです。

着床から生まれるまでは優れた遺伝子だけを選別することで優れた遺伝子を人工的に残そうとし、さらに生まれてからも大体の寿命や潜在的な疾患をすべて明確にして相対的な優劣を決定づけることで、生き方すべてをその優劣によって決めてしまうという差別的な世界をほころびなく丁寧に描いていると感じました。
世界の描き方というか、閉じたひとつの世界を完全に描いているところはもうすばらしいの一言です。

そして、そんな差別的な世界の中で遺伝子的には劣性である*1と扱われながらも、不断の努力を続けることによって宇宙飛行士になるという自分の夢をかなえた男性の物語でして、運や努力する才能といった「遺伝子上のポテンシャルだけでは判断できない要素」が、人間にはどこまでいってもついて回るのだということをつよく意識させられました。


あとこの作品には好きなシーンがたくさんあるのですが、特にラストシーンの切なさといったらなかったです。遺伝子だけが絶対的な存在証明であるあの世界では、逆にいえばヴィンセントがやったように他人の遺伝子を使えばその人になりすますことはできるわけです。見た目や声といった外見の違いではなく、それらは最低限似ていればそれで十分であって本当に大事なのは遺伝子だけなんです。
そんな世界において、自分の存在を消そうと思ったら燃えてなくなってしまうことだけが唯一できる方法なんですよね。金メダルを取れるだけの才能があったのに2番に甘んじてしまったことへの悔恨の象徴である銀メダルといっしょに、すべてを消し去ってしまう方法として自らを燃やし尽くす道を選んだジェロームの気持ちを思うと、ものすごく悲しいと感じながらも不思議とあたたかい気持ちも感じました。

そして鑑賞後に残されたのは多幸感と言ってもよいくらいの満たされた気分なのでした。

*1:作中ではinvalid==不適合と呼ばれてましたが