「地上5センチの恋心」見たよ


何かあればすぐにジョセフィン・ベイカーの曲を歌いながら踊りだし、いつでも地上から少し浮いているような主婦のオデット(カトリーヌ・フロ)。美容師の息子と生意気盛りの娘と一緒に住む彼女は、昼はデパートの化粧品売り場で働いて、夜はせっせと羽根飾りの内職に励む。そして寝る前にはお気に入りの作家、バルタザール・バルザン(アルベール・デュポンテル)の本を読むのがなによりの楽しみだ。バルタザールは、ベタベタのラブロマンス作家だが、オデットにとっては憧れの存在。ある日、彼に感謝の気持ちを伝えたいとファンレターを渡すことに成功する。一方のバルタザールは最新刊が酷評され、挙句に妻がその評論家と浮気していることを知る。そんな時、オデットのファンレターを読み…。

『地上5センチの恋心』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
本エントリーは結末に触れている部分もあるので、未見の方はご注意ください。


本作品も、昨日の「ガタカ」と同じく「映画を一本おすすめしてください」というエントリーで募集した際に教えていただきました。ありがとうございました!

生きるうえでもっとも大事にすべきものは何なのか、人は何を基準にして自分に大事なものを選び取るべきなのかということを教えてくれる良い作品でした。たいへんおもしろかったです。


本作でとくによかったのがオデットがたまに出くわすイエスという人物の存在です。
エスは作中のところどころでオデットと出くわし、軽く一言二言かわすだけの存在だったのでてっきり近くに住んでいる知人なのかと思っていました。ところが、彼が出てくるシーンや交わすセリフ、さらに出会ったときの表情や状況を注意深く観察してみると、イエスは実在の人物ではなくオデットの心情を表現するためのキャラクターであることに気付いたのです。
大好きなバルタザールが自分を頼って来てくれたことで喜んで張り切っているときにはかいがいしく誰かの足を拭いてあげていたり、オデットがいっしょに働いている人たちから誤解を受けて傷つくその横で手にけがを負って静かに立ちすくんでいるのです。


そしてこのイエスを使った演出に限らず、本作はオデットの感情表現をベタすぎるくらい分かりやすく豊かに表現していてそれがまたかわいらしくて頬が緩んでしまいます。嬉しいことがあると思わず体が浮いて空に飛んでみせたり、大好きなバルタザールと腕を組んだことがうれしくて足が地を離れて体半分浮いてしまったりするのです。さらに、歌を歌いながら踊りまわキュートなオデットの姿を見ていると、彼女の朗らかさから幸せを分けてもらえるような気にさえなってくるんですよね。

とりわけ、オデットの家族3人とバルタザールと息子2人の5人で歌い踊り狂うシーンのお祭り感は本当に素晴らしくて、最初は笑いながら観ていたのに最後は泣きたくなるくらい満ち満ちた気持ちになってしまいました。

落ち込んだときに寝転がって眺めたら元気になれそうな、そんなすてきな作品でした。

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