「それでも夜は明ける」見たよ


1841年、南北戦争によって奴隷制度が廃止される前のニューヨーク。黒人音楽家・ソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていた。だが、ある日突然、彼は拉致され、“奴隷”としてニューオーリンズへ売られてしまう。その地でソロモンを待っていたのは、狂信的な選民主義者・エップスら白人たちによる容赦ない差別と暴力。虐げられながらも、決して“尊厳”を失わないことを心に誓うソロモンだが、そのまま12年の月日が流れてしまった。そんな中、奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者・バスとの出会いが、ソロモンの運命を大きく変えていく――。

『それでも夜は明ける』作品情報 | cinemacafe.net


本作はアメリカで黒人を奴隷として扱うことが制度として認められていた時代に起きた事件を描いた作品でしたが、そのとんでもないほどのおそろしさに身震いしてしまうほど強烈な内容でした。「普通に暮らしていた人がだまされて拉致されたあげく奴隷商人に売られてしまい、それからの12年間つらい奴隷生活を強いられる」なんてことが行われていたことがそもそも怖いのですが、人が人としての尊厳を奪われて生きることがどれほど残酷で許されないことなのかということをこの作品を観ながらあらためて実感しました。

人を人としてあつかわずにモノ扱いし、そのことにまったく罪悪感をおぼえない白人たちの容赦のなさには戦慄しました。


話は少し変わりますが、わたしは「年上の方がえらい」ということが当たり前のようにまかりとおっていることがいつも不思議でなりませんでした。たとえば部活での上下関係や会社の先輩・後輩関係などがそうなんですが、たかが数年生まれるのが早かっただけの人がなぜえらそうに接してくるのか理解できなかったしすごく嫌でした。

もちろん、知らないことを教えてくれるところや指導してくれるという点については尊敬、感謝できるし、そういった優劣や信頼に基づく上下関係であればまだ理解も納得もできるのですが、そういったものが何にもないくせにただ年上というだけでえらそうにする人もわりと少なくなくてそういう人と関わるのは本当に不愉快でした。


なぜ年上であるということ以外何ももっていない人がえらそうに振る舞えるのか?


この作品を観ながら「なぜ白人たちは自分たちの方が支配的であることに疑問をもたないのか?」と不思議だったし、自分たちの方が強者であることを前提とした関係を強要していることがとにかく観ていて不愉快でした。そしてその不快感はわたしが以前から抱き続けていた「なぜ年上だというだけでえらそうに振る舞えるのか?」という疑問を考えているときのそれと似ていることに気付きました。

白人が黒人よりえらいっていう根拠はないし、年上の人の方が年下の人の誰よりも賢くてえらいっていう根拠もないんですよ。
でも白人は黒人を奴隷として扱うし、年上の人は後輩に対して絶対的な強者であるかのように振る舞ったりします。

結局、たとえ客観的な根拠のない判断基準(ここで言うところの人種だとか年齢の差異)であっても、その集団の中でコンセンサスの取れた優劣の判断基準があればそれを拠り所に強者であると自覚してしまえるのが人間なんだろうなと。他者よりも優位な立場に立ちたいという欲求というのはおそろしいし根深いなとあらためて実感しました。



@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞



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