「九月が永遠に続けば」読んだよ

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。

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おもしろい/おもしろくないで言えば間違いなくおもしろいという人が多そうなのですが、わたしはあまり好きではなかったですし、とにかく読んでて不愉快な作品でした。
ではいったいなにが気に入らないのかと考えてみると、主人公である佐知子の性格にイライラしてしまったのです。


なにがすごく不愉快かって佐知子は窮地におちいったときには自分でなんとかしようとすることなく、ただ目をつぶって過ぎ去るのを待つだけなんですよね。もちろんその人の判断力を超えた出来事に遭遇した場合にはそれもどうしようもないというのは分かるのですが、なんかもう全部そうなんですよ。
目の前で起きている嫌なことや困ったことすべてが、自分が目をつぶっている間になんとかならないかなと思ってやり過ごそうとしているようなそんなどうしようもない人間なんですね、この佐知子*1。もう読んでてイライラMAXですよ。


具体的な例を挙げると、教習所の路上教習の際に佐知子が不注意で老人をひいてしまいそうになるシーンがあるのですが、そのときもブレーキを踏んだりハンドルをきって避けようとしたりさえしなかったどころか、ハンドルから手を放して声を上げて騒いだだけなんですね。そのシーンでは、横の席にいた教官がなんとかその場をしのいで事なきを得るのですが、もう一事が万事そんな感じで、なにか困れば現状を認識することをあっさりと放棄してしまう佐知子の姿勢がどうにもこうにも許せなくて、50ページくらい読んだところで佐知子が憎くて憎くてしょうがなくなりました。


本を読んでて、凶悪な殺人鬼とか最低の犯罪者などが出てきたときにはその登場人物に対して殺意がわくことは稀にありますが、こういう無害そうな主人公に殺意をおぼえたのは初めてかも知れません。普段はあまりいろんなものに怒りを感じることはないだけに、この感情のたかぶりは正直自分でも怖かったです。


あと、ストーリーについては結末が気になってしまうところについてはたしかにおもしろかったと言えなくもありませんでしたが、期待させたわりにオチが弱かったのと、直接的な性描写や大嫌いな佐知子の心理描写が不愉快だったので全体的に好きな作品だとは言えません...。すごく苦手。

*1:同名の佐知子さん、呼び捨てにしてしまってすいません