「ハッピーエンドにさよならを」読んだよ

ハッピーエンドにさよならを (角川文庫)

ハッピーエンドにさよならを (角川文庫)

望みどおりの結末になることなんて、現実ではめったにないと思いませんか?小説の企みに満ちた、アンチ・ハッピーエンド・ストーリー。前人未到のミステリ四冠を達成した偉才が仕掛ける未曾有の殺意。

http://www.amazon.co.jp/dp/4048737953

わたしはハッピーエンドの作品が大好きでして、読み終えてからも思い出してにやにや出来るような作品をこよなく愛しています。
じゃあその逆のバッドエンドの作品は嫌いかというと意外にそうでもなくて、大好きというほどではないもののそれなりに好きだったりします。
読み終えても楽しめるハッピーエンドと比べてバッドエンドの何がいいと言ったら、読み終わえたら作品のことをなるべく早く忘れられてしまえるところなんですよね。つまり読み終えたら後に引かないんです。本のことはさっぱり忘れてこれでおしまいと出来るんですよ。
最初に書いたとおり、ハッピーなお話ってどうしても読み終えたあともその作品についていろいろと思いを馳せてしまいがちなのでなかなか現実に戻れない。というか戻りたくなくなっちゃうわけで、それに比べると切り替えの良さはどうしてもバッドエンドな作品に分があると思うんですよね。だから忙しいときに下手にすごくわたし好みのハッピーエンドで終わる本を読んじゃったりすると実生活にも影響が出ちゃったりするので要注意ですね。



とは言え、普通はどんな本でも最後まで読み終えなければハッピーエンドかバッドエンドかなんて当然分からないわけで、よほどの話題作でなければどんなベクトルの作品なのかを読む前に知ることは難しいです。ところが本書はタイトルからしてハッピーエンドではないことを主張しているので、バッドエンドな作品が読みたかったわたしとしてはとてもありがたい気分で手にしました。
本書は短編集でして合計11作品が掲載されていますが、内容はいずれもバッドエンド。しかもかなり強烈なインパクトを受けるバッドエンドもたくさんありまして、中には不愉快な気分になれる作品もありました。なかなか凶悪な一冊。


とりあえず短編それぞれの感想を数行にまとめてみます。

おねえちゃん

親子間に生まれたちょっとした齟齬が生んだ悲劇をえがいた作品。
状況が取り返しのつかない状況だけに読後感はかなりきついです。いきなりこのヘビーさ...。

サクラチル

歌野さんらしい演出がおもしろい作品。何も考えずに最後まで一気に読むのがおすすめです。

天国の兄に一筆啓上

出だしでオチが読めたけどかなり不愉快な作品。

消された15番

つかみどころのない作品。話としての筋は通ってるしたしかにいい話ではないバッドエンド作品ではあるけれど...。
何だろうな。
全然面白くなかった。

死面

舞台設定と構成がよかったのでとても好きな作品。

防疫

こういう誰も幸せになれない系のバッドエンドは一番苦手だな。

玉川上死

ラストの手詰まり感がすごくバッドな感じでよいです。これはすごく好き。

殺人休暇

ストーカーにあっていた女性がそれから逃れるためにあれこれ頑張るんだけど....というお話。物語はよく出来てるんだけど、読後感が物足りない作品。

永遠の契り

最低。俺のドキドキを返せ!

In the lap of mother

子どもへのネグレクト系の話はちょっと生々しくてダメ。苦手。

尊厳、死

公園で寝起きするホームレスが中学生に襲われるんだけど、そこに手を差し伸べる人が現れて...というお話。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉そのものの作品。


「玉川上死」と「尊厳、死」は結構好きです。


ちなみに、バッドエンドは読後に気分を切り替えやすいと書きましたが、実はこれも程度の問題でして、例えばものすごい衝撃を受けるくらいのバッドエンドだとハッピーエンド以上に引きずってしまうことがあります。小説だとぱっと思い浮かぶものがないのですが、映画だと「ミスト」なんかがその代表的なものでして、観終えてからも何であんなことになってしまったのかということが日がな頭から離れなくなります。

ミスト [DVD]

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最近ではそこまで強烈なバッドエンド作品を読んだり観たりしてませんが、そういうインパクトをたまには受けたいなと思ったのでした。


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