そして名探偵は生まれた

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)

三月には珍しい雪の日、伊豆の山荘で惨劇は起こった。新興企業アラミツ・グループが所有する保養所・萩宮荘で、若き総帥・荒垣美都夫が撲殺されたのだ。ここは歴代の所有者が次々と不幸に襲われたという呪われた山荘だった。殺害現場となったホールは完全な密室状態だった。外部からは争う物音が確認されたが、現場に入ってみると荒垣の死体しかなかった。ホールの窓の外は降り積もった雪が逃走した者がいないことを証明している。犯人はどこへ消えたのか?社内懇親会で集められた二十人の中に犯人が?事件の解決に名探偵・影浦逸水が乗り出したが…。

http://www.amazon.co.jp/dp/439663255X

わたしにとって、ミスリードと言えば「嘘喰い」か「歌野晶午の小説」かというくらい、歌野さんの作品にはだまされてばかりいる気がします。歌野さんの本を読み始める前はいつも「今回こそはだまされないぞ」と固い決意の元に読み始めるのですが、結局は毎度毎度清々しいほどあっさりとだまされてしまい「いやー、楽しかった」と笑顔で読み終えることになります。
「葉桜の季節に君を想うということ」を読んで、初めて本を読んでだまされることがこんなに楽しいと感じたんですよね。これは非常に大きな発見だったと想うわけです。


さて。そんなわけで今回も気持ち良くだまされようと歌野さんの本を手にとってみたのですが、さすがに今までだまされ過ぎた影響なのか、オチを予見する能力がレベルアップした影響なのか、以前ほど結末に驚くことはありませんでした。
もちろん帯に書いてあるとおり意外性十分の結末は非常に面白いし、読みやすさは相変わらずなんですけどねえ。ちょっと慣れ過ぎてしまった感があります。勢い込んで歌野さんの本を一気に読みすぎちゃったなあ...と少々反省してしまいました。


本書には表題の作品を含めた4作品が収録されているのですが、そのいずれも互いに似たところのない作品だったのはすごくよかったです。特に「絶海の孤島」と「西洋館」は読んでいる時は先が気になってひどく興奮しながらあっという間に読んだのですが、さて読み終えたというその時には思わずしんみりとしてしまう作品でしてそのギャップがとても印象的でした。