「町長選挙」読んだよ

町長選挙 (文春文庫)

町長選挙 (文春文庫)

伊良部、離島に赴任する。そこは町長選挙の真っ最中で…。「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」直木賞受賞作『空中ブランコ』から2年。トンデモ精神科医の暴走ぶり健在。

http://www.amazon.co.jp/dp/4163247807

イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」に続く第3弾。
読みなれてきたせいなのか、それとも何かが変わったのかわかりませんが、伊良部のさまざまな行動をもはや奇行と感じなることはなくて、前の2冊ほどワクワクさせられることはありませんでした。たしかに伊良部のキャラクターについては前作の時点でもう行き着くところまでいってしまっていて、これ以上やり過ぎると単なる頭のおかしいキャラクターになりさがってしまう危険もあったので妥当な判断かも知れません。
その代わりと言ってはなんですが、本作では前作のラストでその多感さのかけらを見せたマユミをとても濃く立体的に描いていて彼女の見方が大きく変わりました。診察中だろうとかまわずにソファで寝転がって雑誌を読んでいる適当なキャラクターというイメージしかなかった彼女ですが、本作で描かれる彼女の内面やプライベートからは彼女のこだわりや意外に繊細な一面も垣間見ることが出来てそのギャップに魅力を感じてしまうんですよね。今まで彼女に注目してこなかったのですが、ここにきてすごく面白いんじゃないかと俄然気になりました。


作品のベクトルとしてはおおよそ前作までと同じでして、その点は前作までを愛読した人であれば変わらず楽しめる内容となっています。
日常抱えているストレスに悩まされている人たち(今回は有名であるがゆえのストレスを抱えた人が多いです)が、伊良部の適当さに感化されてそのストレスから逃れていく様子は相変わらず読んでいて気持ちが良いです。


三作いずれも毎年秋になったら読み直すことになりそうなくらい気に入りました。


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