将来を有望視されている若手政治家のデヴィッド(マット・デイモン)は、ある日エリース(エミリー・ブラント)という美しいバレリーナに一目惚れする。しかし、突然“アジャストメント・ビューロー(運命操作局)”と呼ばれる男たちが現れ、デヴィッドは拉致されてしまう。彼らの目的は、本来は恋に落ちる予定ではなかったデヴィッドとエリースを引き離し、「運命の書」に記述された“運命”に従わせることだった…。
『アジャストメント』作品情報 | cinemacafe.net
TOHOシネマズ宇都宮にて。
「この世界は決定論的なものなのかどうか」ということは誰もが考えたことのあることであると同時に、世界中で永く議論されてきたテーマであり、そして決して答えの出なかったテーマでもあります。というのも、これは客観的な答えの出せるような問いではありませんし、かと言って、誰もがどちらでもいいと割り切れるほどゆるいテーマでもありません。これまで歩んできた人生をとおして形成された価値観は当然ひとそれぞれ異なりますし、「決定論/非決定論」のどちらを望むのかは考え方や信じるモノの違いによって変わります。
そんなわけで、哲学にも宗教にも疎いわたしにはとても語ることのできないテーマなのですが、この作品はそれをうまくかみ砕いて教え諭すように物語を展開してくれたのでとても楽しく鑑賞できました。微妙な点もあったもののなかなか面白かったです。
本作が描くのは「神の存在を信じる人々が思い描く世界」です。
と書くと、神の存在を積極的には信じていないわたしような人間にはあまり興味のもてないものになってしまったのかと思われそうですが、実際にはそうではありません。「本質的には非決定論なんだけど神の意志によって決定論として動かされている世界」という世界、つまり本質的な部分と実質的な部分を分けることで、幅広い層にとって受け入れやすい世界観になっているところにとても感心させられました。
決定論的な世界からの脱却を図るデヴィッドたちの奮闘は非決定論的な世界を信じるわたしが見ると自然と応援したくなりますし、そのあたりの構成や演出もとても効果的でよかったです。
ただし作品全体を俯瞰してみるとどうしても違和感が残る部分がありましたし、そういう点をさして本作をおもしろくないと評する感想をいくつか拝読しました。ストーリーが唐突過ぎてよくわかんねとか、主題が見えにくい、議長って誰よ?などいろいろと挙げられていましたが、そういった部分を認めた上であえてわたしがこの作品を好きだと主張するのは、そんな違和感が些細で気にならないと感じるほどに設定や主張が面白いからなのです。
公式サイトはこちら