「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」見たよ


“新婚なのに倦怠期”の大木信義(竹野内豊)と咲(水川あさみ)夫婦。新居に引越しをしてみたものの、特に気持ちが盛り上がることも無く、些細なことでの痴話喧嘩が絶えない。そんな中、近所のスーパーの怪しげな占い師(樹木希林)に勧められ、1泊2日の新婚“地獄旅行”(温泉付き)へと出かけることに。 様々な人との奇妙な出会いや、2人の周りで起こる不可思議な出来事。果たして、大木夫婦は、“愛”と“情熱”を取り戻すことができるのか――? 笑いと愛に満ち溢れた、心温まるヒューマン・コメディ。

『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』作品情報 | cinemacafe.net

(注意)
本エントリーは作品の内容に超触れてる部分があるので、未見の方はご注意ください。


MOVIX宇都宮にて。


もともと主演の二人が大好きだったのと難しいことを考えずに笑えそうな作品だったので観に行ったのですが、そんなわたしの期待にこたえつつ、さらに意外性あふれる演出もあってすごくよかったです。全体的にクスクスレベルの小さな笑いがたくさん散りばめられていたので、終始笑っていたようなそんな印象がつよく残る楽しい作品でした。


そんなわけで本作は基本的にはコメディ路線まっしぐらな内容でケラケラ笑いながら楽しく鑑賞できたのですが、実はこれ怖い話なんじゃねーの?という気がしてしまい、どういう結末にもっていくのか冷や冷やしてしまいました。


本作は「新婚ほやほやの二人が気分転換に地獄へ旅行に行く」という、いかにも悪ふざけそのものの内容なのですが、あるシーンを観た時に「もしこれがただの旅行じゃなくて神隠しだとしたら...」という考えが頭に浮かんできたのです。突如、何の前触れもなく消えてしまった人は実はこんなふうに地獄に送り込まれたのだとしたら...と考えるとこれってすごい怖い話だよなあと思ったのです。


ではわたしが怖いと感じる元となったシーンがどこかというと、二人が地獄に落ちて宿に向かう途中に「絶対に後ろを振り向いてはいけない」というガイドの指示に従って後ろを見ずに進もうとするシーンなのです。



決して後ろを振り向いてはいけない。


幼い頃。
8/16の送り盆の夜になると、母方の実家ではお盆にお供えしていたお菓子やお花を近くの川に流すという風習がありました。
同じくらいの年の子どもも多かったために、子どもたちはみなそれぞれ好きなものを手にもってワイワイ騒ぎながら歩いて10分ほどのところにある川へと歩いていき、手にしたものを流して帰ってきたのですが、その時に言われたのが「帰り道は絶対に後ろを振り返ってはいけない」ということでした。
後ろを振り返ると、死んだ人が寂しくてついてくるとかそういう説明がされていたと記憶しているのですが、とにかく後ろを見ちゃダメだということを厳命された子どもたちは、大騒ぎしてた往路とは対照的にみなキッと口を結んで前を向いて静かに歩いて帰ったことをよく覚えています。
親のいうことなんてほとんど聞かなかった子どもたちも、決して後ろを振り向くことはなかったんですよね。
子どもだからそういう話に弱いというのもあったと思いますが、それ以上に何か得体の知れない怖さを感じてたんだと思うのです。


話を戻しますが、本作では後ろを振り向いていけないと言われつつ、結局後ろを見てしまい、二人は見知らぬ場所へと飛ばされてしまうのです。これが何を意味しているのか分からなくて何だったんだろうかと考えていたのですが、後ろを見てはいけないのに見てしまったというこの状況がもう私の中ではすごく怖い状態でして、「ずっと笑ってたけどこれ怖い話なんじゃね?」と思うようになったのです。


とまあ、バカバカしい笑いで隠すように描かれる生と死の狭間の世界(というかほぼ死の側なんですが)のお話はとてもおもしろかったです。
わたしの大好きな作品である「ラブリーボーン」で描かれていたように、この世界には死の世界への落とし穴がたくさんあるとわたしは信じていますが、そこにはまってしまうことは怖いことではなくこんな世界と関われることだと思うことでとても明るい気持ちになれたし、結末が与えてくれた仄かな暖かさは笑いとともにわたしに生きる力を与えてくれたような気がしました。


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