「裏窓」見たよ

裏窓 [DVD]

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カメラマンのジェフは事故で足を骨折し、車椅子生活を余儀なくされる。そんな彼にできる楽しみは、カメラの望遠レンズを使って裏窓から見る隣のアパートの住人達の人間模様の観察であった。

ある日、いつも口喧嘩が絶えなかった中年夫婦の妻が突如として姿を消す。セールスマンらしい夫の怪しい挙動を観察していたジェフは、数々の状況証拠から殺人事件と確信。恋人リザと共に調査に当たる。事件を認めない友人の刑事を納得させるため、確たる証拠を掴もうとする二人に危機が迫り……。

裏窓 - Wikipedia

TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(23本目)。
これが人生初のヒッチコック作品でしたが、多くの人が傑作と評しているとおり、とてもユニークな作品でした。住んでいる部屋の窓からのぞき見られる世界だけで物語が完結しているだけでもすごいのに、その窓から見えるそれぞれの家庭、部屋ごとにそれぞれのストーリーを積み上げて物語を紡いでいく様子は本当に楽しかったです。
ひとつの場所だけで物語を展開する傑作と言えば「12人の怒れる男」や「キサラギ」がすぐに思い浮かぶのですが、この2作品はその場に集まった人々が共通の話題について語り合うことで物語を作り上げていく、つまりそこにいる人たちの興味の中心に向かってより閉鎖的に話が集約していったのに対して、この作品はあくまで興味の対象は部屋の外に向いていたところがすごく面白いなと感じました。
狭い場所にいながらもトピック自体は常に外に向けて広がっていくのですが、それが破たんせずに最後までまとめられているだけでもとてもすごいし、そして何よりも観ている我々をちゃんと最後まで引っ張り続けていたことがすばらしいです。
あのラストに納得することは出来ませんが、あれはあれでアリなのかな...。


さて。本作は窓から向かいのアパートの人たちの生活をのぞき見るお話なのですが、そもそもそれって「やっちゃいけないこと」なんですよね。他人の生活をのぞきみるなんてとても下品だし、たとえどんなに興味があったとしてものぞき自体はやっちゃいけないことだと誰もが知っているのですが、でも「やっちゃいけないこと」ほどしたくなる心理というのもすごく分かるんですよね。
背徳心に苛まされながらも、でも覗き見ることを止められない。止めたい、でも止めたくない。そういう気持ちを抱えながら悪いことをすることってすごく楽しいことだと思うんですよね。行儀が悪いとは思いますけど。


やりたいけどやってはいけない。そんな相反する気持ちに板挟みされたときに、もし覗き見ることを正当化できるような事由がなにかみつかったとすれば、わたしは喜び勇んでその事由に飛びつくと思います。誰だって自分の行為、特にやりたいことについては正当化したいと思うもんじゃないですか。
本作の主人公も、「善行をすることでのぞきを正当化したい」という気持ちがわいてきてたし、その正当化する気持ちが暴走し過ぎて今回のような状況になっちゃったのかなと思うんですよね。そのような気持ちの表れ方ってすごく分かりやすいというかそう感じていることそのものをとても好意的に感じたし、この主人公の心境を支持する感情がこの作品をとてもよいものとして感じさせてくれたんじゃないかと思っています。


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