「アフターダーク」読んだよ

アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)

時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる―。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。

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深夜にファミレスで読書をするユリの身の回りに起こったちょっとした出来事の数々と、自宅で寝つづける彼女の姉のいる世界を交互に描いた作品なのですが、前者に該当するシーンはともかく、後者の方はいまいちつかみどころがなくてそこだけ何度か読み直しました。
こちらの世界とテレビの中の世界、そしてそれらを見つめる視点の相関や、その意図するところがよくわからなくてしばらく考え込んでしまいました。


と、後者に関する部分はよくわかりませんでしたが、ユリの過ごした深夜から早朝にかけて空気が徐々に変わっていく前者の描写にはつよく心奪われました。雑然としている深夜のファミレスに始まり、夜が更けるにしたがって街の喧騒が徐々に静けさに沈んでいく様子がこれほどただしく表現された物語を初めて読みました。早朝、ひとどおりのない公園にただよう空気の静謐さにもいたく感心させられました。


村上春樹作品は初めてでしたが、これをきっかけとして他の作品も読んでみようと思います。