「レ・ミゼラブル」見たよ


これまでに世界43か国、21か国語で上演され、世界最長のロングラン記録を誇る伝説の大ヒットミュージカル「レ・ミゼラブル」が、ヴィクトル・ユゴーによる原作の壮大なスケールはそのままに、鮮やかにスクリーンに登場――。

『レ・ミゼラブル』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮で観てきました。

本作「レ・ミゼラブル」は、今年観た中ではもっとも心に響いた予告だったこと、そして幼い頃に原作を読んだことがあってそれがとても印象的な内容だったこともあって、かなり前から観るのを楽しみにしていました。映画というよりも舞台をそのまま映像化したような構成・演出だったので期待していたようなものではありませんでしたが、ものすごく印象的で大好きなシーンや悲しいけれど多幸感あふれるラストシーンがあまりにすばらしくて終始めそめそと泣きながら鑑賞してきました。


この作品のよかったところを挙げる前に、まず残念だったところを挙げておくと一番大きかったのは「常に物語のピークのような盛り上がりが158分も続いた」のがちょっと観ていてしんどかったかなと。いくらすばらしい歌声だといっても158分もこの調子が続くとややダレてしまってただでさえ長い上映時間が長く感じられたし、それであればシーンごとにもっと抑揚をつけた方がよかったんじゃないかなとは思っています。

周囲の評判を聞く限りでは、この抑揚の弱さを「テンポが単調だった」と感じるか「すごいテンションが最初から最後まで続く」ととらえるのかによって評価が分かれているような気がしますし、後者のようなポジティブな評価をくだした人は舞台の映像化として楽しんでみている人が多いように見受けられました。

わたしはというと比較的前者(テンポが単調だった派)寄りの感想をもっているのですが、でもその残念さ以上にすばらしいシーンの数々がわたしにとっては印象的でしたのでこの作品のことを好きにならずにはいられませんでした。そう考えると全編を通して観るというよりも、自分が大好きなシーンの前後20分くらいをつまみ食いするというのがこの作品のよい楽しみ方なのかなと思いました。


DVDとかBDが出たらそんな風に観返したいけど、でもこういう作品こそ映画館で観たい作品でもあるんですよね...。悩ましい。


というわけで、わたしが大好きなシーンと曲を紹介します。


 最初は「レ・ミゼラブル」の楽曲としてはもっとも有名だという「I dreamed a dream」。この曲をアン・ハサウェイ演じるファンティーヌが切々と歌い上げるシーンがとても印象的です。

病気にかかってしまった娘のコゼットを救うために、きれいな髪を売り、歯を売り、そしてついに初めて体を売ることになった彼女が、自らが堕ちるところまで堕ちてしまったことに絶望しながらこの歌を歌うのです。幸せな生活を夢見ていたのにその夢はやぶれ、体を売らずには生活が立ち行かなくなくなってしまった自分の身の上を嘆く彼女の気持ちがすごく伝わってくるシーンでした。

このシーンのアン・ハサウェイの表情は圧巻の一言。



 次は、個人的には「I dreamed a dream」よりも"この作品の歌"としては印象に残っているのが、革命を起こそうとした若者たちが雄々しく「Do You Hear the People Sing?」を歌い上げるシーンです。
革命を起こそうと決起しようと団結するとき、革命に向けて行動を始めたとき、そして思うとおりに革命が進まずに苦しい状況に追いやられたとき。そんなときにこの歌を歌うことで革命を起こそうという気持ちを鼓舞し続けるのです。

貧しさにあえぐ市民たちが決起し、自らを捕え続ける鎖を解き放ち自由を手にする。

そんな未来を夢見ながら歌われるこの歌は、どのシーンで聴いてもつよく胸に響いてきました。


そして最後は、ジャン・バルジャンが死を迎えるラストシーン。
死に瀕したジャン・バルジャンはコゼットとマリウスの二人に看取られながら、そしてファンティーヌに迎えられながらその最期を迎えます。生涯を終えるということはとても悲しいことであるはずなのに、不思議とそういった悲哀は感じられず、むしろこのシーン全体には多幸感さえただよっています。

たったひとつのパンを盗んだだけですべてを失い、その後も真っ当に生きることを奪われてしまったわけですが、彼はそのことを恨むわけでもなく、彼自身に与えられた生涯をまっとうすることができたのです。そしてそのような生き方ができたのは、大事な銀の食器を盗んだのにそれを一言の責めもなく赦し、さらに銀の燭台まで与えてくれた司教の存在があったからなのです。

そのたった一度の出会いが彼の人生を変え、不自由なことはありながらも一人の娘を育て上げたうえで最期を迎えられたと思うと、人生の不思議さというかとらえどころのなさに何とも言えない気持ちになります。わたしは信仰心のまったくない人間ですが、生きていく中でたまに出会う「なにか大きな力があるとしか思えないような出来事」を目の当たりにしてしまうと、否がおうにもそういった存在を意識せずにはいられなくなります。

幸せな末路を迎えた彼の姿を描いたラストシーンはほんとうにすばらしかったです。


わたしはこれらのシーンは涙なしには観られなかったし、いずれも差の付けられないすばらしいシーンでした。
これらのシーンだけエンドレスリピートしたいですね(わがまま)


最初に書いたとおりこの作品はかなり好き嫌いが分かれる作品なので、もろ手を挙げて誰にでもおすすめしようとは思いません。わたしの観測範囲に限って言えば、賛否は2:8くらいで否の人が多いですし、実際に作品を観た今となってはそういう人が多いというのもよくわかります。

ただ、それでもわたしはこの作品がすごく大好きだなと思っているし、音楽にも映像にも見どころのあるすばらしい作品だと思っているので、もし少しでも興味があるならぜひ一度観て欲しい作品だと思います。


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