- 作者: 麻倉怜士
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2009/10/19
- メディア: 新書
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ホームシアターの醍醐味とは、精細なハイビジョン映像と圧倒的な音響効果が渾然一体となって生み出す至高の臨場感を、自宅で愉しむことにあります。そのためのツールが、サラウンドスピーカー、AVアンプ、プレーヤーといった機器です。では、これらをどういう基準で選べばいいのか、どのように使いこなすのか。暗中模索のシアター道を一気に切り開く、どこまでも実用的で、生きた教養。“初心者以上マニア未満”に送る麻倉流「ホームシアターの作法」。前著『オーディオの作法』の姉妹編。
http://www.amazon.co.jp/dp/4797353872
最近めっきり行かなくなりましたが、結婚する前はよく友達とバイキング形式の食べ放題に出かけたり、ビッグサイズのメニューに挑戦したりしていました。わたしはそれほど食べる方ではないので費用対効果で言えば決してよい方ではないのですが、バイキングは好きなものを好きな分だけ食べられるのがすごく楽しいし、大きな食べ物を食べきったあとの達成感というのはなかなか気持ちのよいものです。
そんなイベントによく付き合ってくれた友達が数人いたのですが、その中に超細身なのにものすごい大食漢な奴がいました。見た目は一日一食でも足りるんじゃないかというくらい細身で大食いにはまったく見えないのですが、ものすごい勢いですべてを平らげる様子がとても頼もしく大食いチャレンジには欠かせない存在でした。
それとは逆に、見た目的にはものすごい量を食べそうな体格をしているのですが、実際は食が細くて食べ放題に言ってもさほど楽しめない人というのもいました。「太っているからたくさん食べそう」なんてのは他人の勝手な思い込みというか妄想でしかないわけですが、でも世の中には「人は見た目が9割」という説もあるくらい見た目から受ける印象というのは強力でして、太っている人には「こいつはたくさん食べるんじゃないか」的な勝手な期待がかけられてしまうわけです。
こういった期待を「他人からの無言の期待」とわたしは呼んでいますが、上記のような期待にそぐえないという例はたしかにありつつもでも基本的に大多数の人たちはこういった他人からの無言の期待にちゃんと応えて日々を過ごしているのです。
逆説的ではありますが、だからこそ、人は勝手に他人に期待してしまうともいえるんですよね。
ただ、残念ながらこの「他人からの無言の期待」へ応えるという点において、わたし以上にその期待を損なえる人はそうはいないと断言出来ます。わたしは他人の期待にまったく応えられない人間であると自覚していて、とにかくあらゆる他人の期待に応えられないまま毎日を生きているのです。
具体的にどういう事例があるのかをひとつずつ列挙しようかと思ったのですが、ひとつひとつ並べるのが面倒なので、一覧にまとめてみました。
他人からの期待 | わたしの実態 | びっくり度 |
---|---|---|
秋田出身だから酒がつよそう | ビール数本で記憶が欠落 その後さまざまなハラスメントに及ぶ危険あり |
☆ |
海の近くに住んでいたから泳ぎがうまそう | そもそも泳げない | ☆☆ |
東北出身だから寒さにつよそう | 寒いのは大嫌い 雪なんか見たくもない |
☆☆☆ |
秋田出身だからスキーがうまそう | スキーはやったことがない スノーボードもしかり そりくらいだったらいける |
☆☆☆☆ |
理系出身だから機械に詳しそう | 電子回路とか超苦手 そもそも車のバッテリー交換すら出来ない |
☆☆☆☆☆ |
この中でも特に驚かれるのが、機械が苦手だということです。
学部や院で所属していた研究室は実験系の研究室だったので、手先が器用で自分でいろいろ作れたり器用じゃないにしても中身に詳しい人がたくさんいたのですが、わたしは本当に回路とか実験機器を触るのが嫌でしたし機械を使うこと自体がとても苦手でした。実験もろくに考えられないのにどうやって修士を取ったのかというと、プログラムでチョコチョコっとシミュレーションデータを作って、さらに他の人がとった実験データを解析した上で、それらの結果をつき合わせてフンタラカンタラすることで何とか形になったという状態でした。
いやー、懐かしいなあ。
さて。いったいこの話がこの本とどう関係するのかというと実は何にも関係がなくて、単にわたしは機械が苦手なのでオーディオ機器にもとても疎いということを言いたかっただけなのです。
さて。そんな機械に疎いわたしでしたが、ここ数年映画を観るようになったことでホームシアターというものにも興味が出てきました。
とは言っても、数百万程度をかけて自宅に中途半端な設備を整えるくらいだったら、そのお金で映画館に行く方がよほど安価でいい環境での鑑賞が出来るという考えはまだ根強くて、実際にやってみたいというレベルと言えるほどその欲求高くはありません。
それでも、たまにオカルトとも揶揄されることがあるオーディオマニアの世界を少しでものぞいて見たくて本書を手にしてみました。
本書は基本的にはタイトルに作法という単語があることからも推測されるとおり、初心者向けの入門書という位置づけになります。ですので、本当に導入する際に気をつけることや、さまざまな機器のメリット/デメリット、価格帯ごとの違いについてとても詳しく説明がされていてとても興味深く読みました。著者も入門書ということでかなり気を遣って分かりやすさを心がけていることが伝わってくるくらいに極力専門用語を排しているのですが、やはりところどころにマニアらしい鬱陶しさを感じさせる熱い語りが混じってたのが印象的でした。もっと思いの丈を熱く語りたいんだろうなあと思うと、そうさせてあげたいような気分になってしまいました。
非常に分かりやすくてどういった基準で選べばいいのかということも書いていたのでとても参考になったのですが、巻末の初心者向け(コストパフォーマンス重視)にお奨めしたホームシアターセットの値段が50万円を超えているというのを見て、まだ自分には遠い世界だと改めて実感しました。
これだけのお金があれば5年は好きなだけ映画館で映画が観られるよな...。
それはともかくとして、本書はホームシアターの導入を実際に検討している初心者にはとてもありがたい一冊ですので、そんな人にはお奨めです。