「ゼロの焦点」見たよ


結婚式から7日後。仕事の引継ぎのため、以前の勤務地である金沢に戻った夫・鵜原憲一は、そのまま帰ってこなかった。憲一の足跡をたどって北陸・金沢へと旅立った禎子は、憲一のかつての得意先・室田耐火煉瓦会社で、社長夫人の室田佐知子と受付嬢の田沼久子という、ふたりの女に出会った。一方、憲一の失踪と時を同じくして連続殺人事件が起こる。一連の事件の被害者はすべて、憲一に関わりのある人間だった。夫の失踪の理由、そして連続殺人事件の犯人とその目的とは――。すべての謎が明らかになるとき、衝撃の真相が禎子を待ち受けていた。松本清張生誕100年記念作品。社会派ミステリーの原点が、スクリーンに甦る。

『ゼロの焦点』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。


戦後という時代、昭和という時代の空気を感じさせられる作品でした。
当然、わたしはリアルタイムでこの時代を知っているわけではありませんが、先行きの明るさ、つまりこれから右肩上がりに時代がよくなっていくであろうことを感じさせる時代の空気に、戦争と敗戦の影を色濃く引きずるよどんだ空気がほのかに練りこまれている描写には戦後から脱却しようと足掻いていた時代をふと想起させる力が感じられました。決して明るい物語ではありませんが、時代の明るさとほの暗さの対比が絶妙なバランスで描かれていて作品の世界に引き込まれました。
予告と中島みゆきさんのエンディング曲がすごく気に入っていたので期待していましたが、その期待以上にすばらしい作品でした。


流転の海 第1部 (新潮文庫)

流転の海 第1部 (新潮文庫)


わたしは宮本輝氏の「流転の海」という小説が大好きなのですが、この小説の舞台も戦後であり戦争から復興していく日本の中で生きていくひとびとの姿を描いています。映画を見たときに感じた気分の高揚を考えるに、わたしはこの時代が好きなのかも知れません。


話は変わりますが、わたしが就職をしたのは2002年でしたのでもう8年も前のことになります。
当時は超就職氷河期の真っ只中でして、わたしが就職活動をしていた頃には就職難という言葉がずいぶん定着していたように記憶しています。勤労意欲がないわけではないのに就職出来なかった人の多かったわれわれの年代はいつしかロストジェネレーションなどと呼ばれるようになっていました。


わたしは今年で31歳になりましたが、わたしが小学生のころはちょうどバブルの頃と重なっていまして世間が好景気に浮かれていた時代の匂いというものは何となく知っています。上記のとおり当時わたしは子どもでしたので、給料がすごいよかったとか就職活動しなくても余裕でしたといった素敵な恩恵に預かることが出来たわけではありませんが、右肩上がりに経済成長を続けることが当然だと誰もが思っていた世間の空気みたいなものは何となく感じていました。
わたし個人の感覚とはちょっとずれますが、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」という作品で描かれている風景というのが私の中にある一般的なバブル時代に対するイメージと重なります*1。観た当時はさほど面白いとは思いませんでしたが、去年テレビで放送されたときに観たときには時代背景の描写へのこだわりがすごくおもしろいなと感じたのです。



本当かどうかわかりませんが、こういうお金が飛び交うさまを見るととてもうらやましい時代だと思います。




テレビやネットで見たことがあるのですが、ロストジェネレーションと呼ばれる世代が「バブル景気なんていう楽しそうな時代の恩恵に預かれた世代」の人たちに対して怒りの矛先というか敵意を向けることがあって、それは「自分たちの世代は前の世代のツケを払わされている/搾取されている」と感じることへの怒りであって世代間闘争の一種といえるのだろうと思うのですが、でもそういう世代ごとの損益収支という観点で考えると戦争にすべてを奪われて死んでいったために文句をいうことすら出来ない世代というのは今と比べても圧倒的に損をしているけどどうしようもないんだよな...ととても申し訳ない気分になるし、それに比べて就職出来ないくらいで「既得権益者ばかりが安定した生活を手に入れられる平和な時代なんか戦争が起きてすべてがひっくり返ってしまえばいい」なんて言ってしまう人の神経はどうかしているとも思うし、でもいわば働きざかりとも言える同年代にも働きたくても働けない人がいる現状を考えるとやっぱりどこかおかしいんじゃないかとも思うわけで、本当にめんどくさい時代だよなー、と思った話を書きたかったのですがもう書くのに飽きたので簡単にまとめてみました。
ただ、たぶんいつの時代だってめんどくさいことがあるのは一緒で、結局はそのめんどくさい現実にどう妥協して生きていくのかというそれだけなんでしょうけどね。


何だかグダグダになってしまいましたが、映画はとてもよい作品でしたのでお奨めです。


公式サイトはこちら

*1:そういえばこの作品にも広末が出てたなあ