「生きるのも死ぬのもイヤなきみへ」読んだよ

生きるのも死ぬのもイヤなきみへ (角川文庫)

生きるのも死ぬのもイヤなきみへ (角川文庫)

自意識を持て余す東大生、自分の容貌を嫌悪するOL、働くことが嫌いなフリーター、5年間引きこもり中の男…。「どうせ死んでしまうのだから、何をしても虚しい」彼らの心の叫びは“正しい”。しかしその真実は、善良で鈍感な日本社会からは抹殺される。苦悩する彼らと著者が対話を重ね、人生の虚しさを直視し、生きることの意味を探究する哲学対話エッセイ。生きづらさを抱える人に捧げる一冊。

http://www.amazon.co.jp/dp/4043496079

中島氏の本のタイトルはいつもこんな感じなので、中島氏の本をよく読むということを知られると、「生きるのが嫌なんじゃないか」とか「死にたいんじゃないか」というように思われてしまうようです。
たしかにそのように思われてしまうのもいたしかたないのですが、でも実際にはそんなふうに考えて生きているわけではありませんし、死にたいだなんてまったく思っていません。そりゃたしかに生きているだけで面倒なことはたくさんありますし、生きることに後ろ向きになってしまうことも多々ありますが、でもそれだって生きていればこその悩みなわけで、わたしが死んでしまったらもうなにもなくなってしまうわけです。
死ぬのは怖いから死にたくないなという情けない理由が主ではありますが、わたしは生きることには極力前向きだし、そういう前向きにしようと努めているからこそ逆に日常的に死にたいと思う人の気持ちにとても興味があるのです


とまあ、わたしの人生にかける意気込みはここまでにしますが、本書は著者に生きにくそうであると選ばれた人々が著者とのディスカッションを通してそれぞれの人生観を語るという対話形式でまとめられています。
参加者ひとりひとりの言葉をときに著者がわかりやすく解きほぐして発言者に確認をしたり、逆に著者に対して参加者が質問を投げかけて対話を繰り返すことで各人の言葉だけで意見を語られるよりもその真意が伝わりやすく感じました。
生きることの意味について徹底的に考えこんでしまったり、どうせ時間が経てば地球も何もかもが消滅してしまうのだからと無気力になってしまったりすること自体には何の共感もおぼえませんでしたが、自分の中に生まれた疑問を適度にごまかして生きられない人の生きづらさが少し理解出来たような気がします。


実際に理解出来たかどうかは自信がありませんが、そんなささやかな一歩を踏み出せた気分になれる一冊でした。