「架空通貨」読んだよ

架空通貨 (講談社文庫)

架空通貨 (講談社文庫)

女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した―。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、二人がたどり着いたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。江戸川乱歩賞受賞第一作『M1』を改題。

Amazon CAPTCHA

先日読んだ同著者の代表作である「空飛ぶタイヤ」と同じく、企業犯罪をあばくために個人が立ち向かうというストーリーでしたが、終始緊張感にあふれた展開が繰り広げられて最後まで一気に読みきりました。おもしろかったです。


本作の設定で興味深かったのは、教師が生徒の家族の窮地を救うという設定です。
社会科の教師である辛島は、元々商社で企業の信用調査をしていたために財務や債権についてとても深い知識をもっています。さらにさまざまな情報を引き出すコネクションもあるし、加えて他者との交渉能力も高いためにその専門知識や情報を存分に活かせるのです。辛島の存在はわたしの中の教師像とはかけ離れていたことも、物語に興味をもたせる役割を担っていたように感じます。
あと、これは個人的な嗜好になるのですが、窮地に陥った女子高生に助けを求められるというシチュエーションはかなり高ポイントでした。
いい年をした大人たるもの、実生活に役立ちそうな専門的な知識のひとつくらい持っているべきだと思っているのですが、それは身の回りに困っている人がいたときにそれをさっと手助けできる能力を何かしらもっていたらかっこいいじゃない!!というわたしの理想でもあり、本書はそれをとてもよく満たしてくれています。


強者が弱者を蹂躙するよりも、弱者が強者に噛み付く話の方がおもしろいですよね。
判官びいきなわたしにはたまらない内容でした。


[参考]
「空飛ぶタイヤ」読んだよ