小さな熱帯魚店を営む社本の家庭は不協和音を奏でていた。年頃の娘は若い後妻に反発し、そのために社本と妻の間も上手くゆかなくなっていた。娘が起こした万引き事件をきっかけに、社本はより大きな熱帯魚店を経営する村田と知り合う。村田は社本の娘の万引きを見逃すどころか、親切にも娘を自分の店で雇う。やがて、村田は社本に高価な熱帯魚を輸入する事業を手伝ってほしい、と持ちかける。その申し出を引き受けた社本は、想像を絶する異常な事態に巻き込まれていく…。
『冷たい熱帯魚』作品情報 | cinemacafe.net
(注意)
作品の内容・結末に触れている部分があるので、未見の方はご注意ください。
宇都宮ヒカリ座にて。2011年上半期ベスト未見作品補完計画第四弾。
予備知識なしで映画を観ることが多いわたしにしては珍しく、ある程度作品の情報を知った上で鑑賞したのですが、うわさどおり...いや、伝え聞いていた以上に壮絶な作品でした。グロテスクな映像にめまいを覚え、心が折れそうになるストーリーにくじけそうになりながらの鑑賞でした。
すごい作品だけど重い...。重過ぎるぞ...。
この作品を観てまっさきに感じたのは異様な居心地の悪さでした。
自分や自分の家族のことなのにまったく自分の意思や意見が反映されず、ひたすら村田の思うがままに引きずり回される社本。自身が置かれている状況は刻々と変わっていくのですが、その変化はあくまで村田が望んで行う結果を得るためのプロセスであり、社本自身の意思はまったく存在しないことがわたしにはただただ不快で居心地が悪く感じられたのです。
さらに自分の知らないところではどんどん外堀を埋められていき、どうにもこうにもならなくなっていく閉塞感。
息苦し過ぎる....。
そんな厳しい状況が社本を徐々に追いつめ、そして彼を変えていきます。
感情を爆発させた社本は勢いで村田を殺してしまい、そこからはまるで村田がのりうつったかのような行動を取り始めるわけですが、そんな彼の変化を喜んでいる自分に気付き、そこで「わたしは社本に対して自分の劣等感を投影して観ていた」ことに気付いたんです。
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- 言いたいことを十分に言えず、周囲に流されるように生きているところ
- お前は自分一人ではなんにもできないと罵られても何も言い返せないところ
そんなわたし自身が認識している弱さを社本に投影していたからこそ、社本の窮地が辛く感じられたのだと思うし、社本が強者として振る舞う姿に恍惚とした感情を抱いてしまったと思うのです。だから、娘やその彼氏をボコボコにいたぶるところなんてもう最高に気持ちよかったし、娘が見ている前でも気にすることなく妻を無理やり犯し続けるところをみてかっこいいなんて思ってしまったんですよね。あの瞬間の社本との一体感はちょっと自分でもドン引きするくらい強烈でした。
もう全然感想でもなんでもなくて、単なるわたしの感情の記録になってしまったのですが、とにかく感情をあちこちに連れまわされたなと感じる作品でした。
ちなみに先月行った「2011年上半期ベスト映画」の企画ではこの作品が堂々の3位(邦画だけだと1位でした)だったんですが、得票率が20%(44票)ですから5人に1人は選んだ計算になります。すごい人気!
トータルでトップとなった「ブラックスワン」もそうですが、こういうズシっとくる映画が好きな人って多いんだなー...とあらためて映画好きな人たちと自分の趣味の違いについて想いを馳せてしまいました。唯一無二のすごい作品なのは分かるんだけど、わたしは二回は観たくないし好きとは言えないなあ...。
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