「いちご同盟」読んだよ

いちご同盟 (集英社文庫)

いちご同盟 (集英社文庫)

中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087497577

ひと夏の経験と言う言葉がある。
わたしのように煩悩の塊のようなやからには卑猥な言葉にうつるけど、でもたぶんそれはわたしがそういう人間だからであり、本来はもっと広義に解釈できる言葉だと思う。
人はいろいろな経験をして成長するけれど、特に夏という季節は大きな変化が生まれやすいような気がする。
夏は気持ちがオープンになりやすいせいか見知らぬ人たちと触れ合う機会が増えるし、長期間の休みがあるといろいろな場所に行くことも出来るわけで、そういった「成長のための経験」をする機会が多い季節なのだとわたしは思う。


わたしは、そんなひと夏の経験が出来るほど若くはなくなってしまったけれど、いまだに夏になると何か大きな変化をもたらす経験が出来るような気がしてワクワクしてしまう。でも現実にはそんな経験が出来ないことなどわかっているから、「夏の庭」とか「夜のピクニック」のようなひと夏の経験を疑似体験出来る本を読んで物語の世界に浸ることで自分を慰めてはごまかしている。
だから、わたしは夏になると子どもがひと夏で成長を遂げる話をよく読むし、その手の話が大好きだ。


さて。やっと本書の話になるけれど、この本もまた一人の少年の成長譚である。
生きることに嫌気がさして死のうと考えていた一人の少年がある出会いを経験するという話なのだけれど、本書を読むまではこの手の成長の物語は満遍なく好きになれる自信があったけれど、まあそれは単に今までそういう本ばかりを読んでいただけだったと言うことを思い知らされた。
心底参った。


とりあえず言えることは「いちご同盟」というタイトルにだまされた。
何だかかわいい女の子が出てきて「わたしとあなた二人だけの秘密だよ♪」とかそういうかわいい同盟かと思っていたのに、全然違ってた。先入観を持ちすぎていたのがよくないのはそのとおりだけれども、でも、あまりにあまりな結末に読み終えたわたしは泣いた。