名門一家の若き跡継ぎジョージ・W・ブッシュ(ジョシュ・ブローリン)は、40歳になるまで父から与えられた仕事を途中で投げ出す、アルコール中毒の放蕩息子。いつかは自分も父親に認められたい、そう思いながら父の巨大な影と闘うブッシュだったが、ある日、彼は天からの啓示を受ける。「お前が大統領になるのだ」。遂に大統領の座を手にし、父に認めてもらえる日がくるはずだった。だが、彼がもたらしたのは、大儀なきイラク戦争に未曾有の金融危機…。世界情勢を急変させ、飛んでくる靴を見事にかわして表舞台から姿を消したブッシュ。彼を突き動かした夢の正体とは? そして世界をも巻き添えにした、その脅威の親子関係とは…? 名匠オリバー・ストーンが、歴代最低支持率の大統領と、彼を輩出した名門一家の知られざる人間模様を暴いた問題作。実力派俳優、ジョシュ・ブローリンがブッシュを演じる。
『ブッシュ』作品情報 | cinemacafe.net
宇都宮ヒカリ座にて。
他人を多面的に評価するというのは簡単なようで実はとても難しいです。相手のことをよく知った上で適切に評価するというただそれだけのことなのにこれが出来る人というのは非常に少なくて、相手のいいところ悪いところを見ようともせずに、自分の目線から見える部分だけで他人を評価してしまう人の多いこと!!
「あいつは仕事が出来ないから」とか「あいつはブサイクで彼女がいないから」とかそういった一面的な評価で他人を見下す人がいると本当にイライラしてしまいます。そんな一面的なダメさを持つ人だって当然いいいところがあるし、そういった相手のいい部分を知ろうともしないで他者を切り捨てるその傲慢さには言いようのない怒りを覚えてしまうのです。
と、言うよりもね。そうやって他人を下に見ている人ほど実は大したことがないというのも経験上すごく感じていて、トータルで見たらお前がバカにしているあいつの方が全然すげーんだぜ、っていうことも少なくありません。
自分に自信がない人に限ってそうやって他人を見下すんだよね...。
もちろん私自身がその事実を非難できるほど他人をよく見て評価しているんだと言い切れる自信はありませんので、もちろん自戒をこめての言葉なのですが、周囲を見渡してもそういった正当な評価が出来る人というのは本当に少ないことに驚きます。
本作ブッシュは、世間的にはダメな大統領と揶揄された41代大統領であるブッシュ氏の半生を描いた作品なのですが、これを観て彼をものすごく見直しました。そしていかに自分が一面的にしか見ていなかったのかということに気付いてがっくりと肩を落としてしまいました。
ブッシュ氏を見直したと書きましたが、作中でもブッシュ氏がものすごくすばらしい人だという描かれ方をしているわけではありません。定職にも就かずにフラフラし、街で出会った女の子を孕ませてしまうダメ人間という一面も描かれているのですが、一方では毎日5kmのジョギングを欠かさないというストイックなところや人心掌握に長けているというよいところも並列で描かれているのです。
さまざまな決定に悩み、落ち込み、でもひとつずつ大事なことを決めていく姿にわたしは一人の人間としての魅力を感じたし、もちろんそれは演じた人の力によるところも大きいのでしょうが、それ以上に彼の生きてきたその道筋に感銘を受けました。
人にはいいところも悪いところもあるというのは当たり前のように分かっているつもりでしたが、本作を鑑賞して、普段いかに他人を軽視していたのかということに気付かされ、反省させられました。
130分と長尺な作品でしたが、ものすごくおもしろかったです。
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