「誤算」読んだよ

誤算 (角川文庫)

誤算 (角川文庫)

貧乏くじを引き続けた女に、一発逆転のチャンス到来か?
前夫のためにすべてを失った川村奈緒は、大資産家で重い病気を患う鬼沢丈太郎の住み込み看護師として働き始める。鬼沢を取り巻く家族は、莫大な財産を狙って欲をむき出しにする者ばかり。呆れる奈緒だったが、彼女にも遺産相続のチャンスが訪れる。しかし、それは罠かも知れなかった。

本書のタイトルはなかなか秀逸。
一見しただけでものすごく読みたくなるくらい強烈に興味を引きますし、読んでいる最中もいったいどういう誤算が起こるのかとやきもきしてしまいます。ちょっとしたイベントがあるごとに"誤算"という言葉が頭をよぎり、深読みに深読みを繰り返してしまうせいでなかなか読み進められませんでした。普段同じくらいの厚さの本を読むときの3倍くらいの時間がかかりましたが、その分じっくりと楽しむことが出来ました。
誤算が起こるまでの物語の積み上げ方のうまさや、誤算が起こった時にその積み上げたものがガラガラと崩れていく崩壊感が非常におもしろかったです。


本書の一番興味深い点は、同じ大学で心理学を学んだ2人による共同執筆だという点です。
共同執筆という言葉からは、ひとつの主題を決めておおよそのストーリーを決めた上で、そのストーリーをいくつかに分割して何人かで書くという作業をイメージするのですが、でも本書は本当に別々の人間が書いたものが混ざっているのかと不思議に思ってしまうほど、文章に境目が見えてこないのです。
もしかして、構成を考えると人と文章を練る人という役割分担をしているのかも知れませんが、そうとでも考えないと頷けないほどに文章に統一性が感じられる作品でした。



ちなみに、わたしにとっての一番の誤算は、ストーリーが意外におとなしくまとまってしまったことでした。わたしがあまりに深読みしすぎたせいなのかも知れませんがちょっと拍子抜けしてしまいました。
もちろんそれでも十分すぎるくらいに面白いだけに、期待をあおり過ぎるタイトルというのは罪作りだなと思ったのでした。