ブラック企業とシュガー社員

ブラック企業とシュガー社員

ブラック企業とシュガー社員

お前がワークライフバランスっていうな!と言いたい上司。あんたが俺の事をシュガー社員って呼ぶ権利はない!と叫ぶ部下。権利ばかりを主張し自分に甘いシュガー社員が増殖する理由。それは御社のブラック度にあった?“シュガー社員”の名付け親がクビ切り時代に突入したすべての会社に緊急提言。

http://www.amazon.co.jp/dp/4893087118

シュガー社員という言葉は初めて聞いたのですが、本書の著者が数年前に作った造語のようでして「シュガー社員」とタイトルにつく本が既に2冊も刊行されているようです。シュガー社員という言葉は、その認識の甘さ、考えの甘さを砂糖に例えてつけられたネーミングであり、「過保護に育てられた、自立心に乏しい社員」を表しているようです。そして彼らの行動は他の社員をもじわじわと蝕み、いずれ会社全体を蝕んでいくことも表しています。


この定義を読んだときに「たしかにこういう人っているよねえ」といろんなひとの顔をあれやこれやと思い浮かべていたのですが、しばらく読み進めるうちに「これって入社当時の自分なんじゃ...」という考えにたどり着いて不意にヒヤリとさせられました。


わたしが社会人になったのはいまから7年も前になります。
数ヶ月の研修の後に配属が決まり、アプリケーション開発を担当することになりました。配属後にOJTでわたしのトレーナーになった方はとても博識なのですが、普段はまったくその能力をひけらすことはなく、いつも静かに指示を出す人でした。その方とは2年少々同じ部門にいたのですが、OJTが終わってからもさまざまな局面でお世話になったことを思い出します。そして、わたしはこの人がいなければこの本に載っているような典型的なシュガー社員として会社を蝕む人間になっていたかも知れないなと考えてしまいます。


当時を振り返ってみて入社直後のわたしを分析してみると、一番の問題点は他人の意見をさほど聞かなかったという点にあります。この本で言えば「俺リスペクト型シュガー社員」に分類されると思います。
ちなみに、本書あでは俺リスペクト型シュガー社員とは以下のように定義されています。

リスペクト=尊敬する。要は自分のことが一番好きで正しいと自負し、とことん自身の才能を信じており、他人のことや会社のことはどうでもいい、という考えがもっとも強いタイプです。目上の人を敬うという発想も培われていないので、上司を尊敬するはずもありません。


26ページより抜粋


さすがにここまではひどくなかったと信じたいところですが、前半の「自分のことが一番好きで正しいと自負し」というところはたしかにそのとおりでした。当時から多少はそうだという自覚はあったのですが、そこは考えがシュガーな社員ですから何だか根拠のない自信でその不安を払拭して好き放題やっていたのです。
どんな様子だったのかを具体的に例示すると、たとえばプログラム仕様書をもらっているのに「もっとこうした方がいいと思う」とか適当な理由をつけて自分の作りたいようにプログラムを作ったり勝手に書かれていない機能を実装したりと結構ひどいことをしていました。


わたしが上司であれば2日でさじを投げているところですが、そんなシュガーなわたしに対してもトレーナーは根気強く大事なことは何かということを教え続けてくれたのです。その後、いくつかの失敗と成功を経験してその差が何に起因するのかを身をもって学んだわたしは、身の程を知り、そして根拠のない自信は跡形もなく消えてなくなりました。
あの時、上司がもっと適当にあしらっていたとしたら...と想像してみるとちょっと嫌な気分になりますが、とにかくこのようなシュガー社員をわたしはへへんと鼻で笑うことなど出来ないなと思うし、わたしが上司からしてもらったようにわたしもシュガー社員のひとりやふたりくらいは成敗改心してやろうかなと思ったりします。


何だか話がわたしの身の上話になってしまいましたので本の内容に戻しますが、本書は基本的にはシュガー社員の分類とそれらへの接し方のパターン/アンチパターンがメインに書かれています。つまりシュガー社員に困らされている立場の人や会社側の目線をベースに、どのように彼らへの対応をすべきかということがまとめられているのですが、結局は根本的にどうしようというレベルではなくて対応の仕方に終始しているというところにこの問題の根深さを感じました。


結局こういう話ってのはその人の立ち位置や価値観次第で正義は変わるわけですから、絶対的な解決方法がないのは当然と言えばそうなのですよねえ....。
読み終えたときにはとてもやるせない気分になってしまいました。
シュガーな振る舞いをして周囲の人たちを消耗させない程度の気遣いは忘れないようにしたいものです。