裁判長!これで執行猶予は甘くないすか

裁判長!これで執行猶予は甘くないすか (文春文庫)

裁判長!これで執行猶予は甘くないすか (文春文庫)

傍聴ブームという社会現象まで起こしたベストセラー「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」待望の続篇はますます絶好調。男泣き大安売りの被告人に、キャラも十人十色の裁判官。嫉妬に狂った地味な女もキャバ嬢に騙された34歳の男も、法廷でそれぞれドラマを展開中。文庫版スペシャル・伊藤理佐さんの突撃傍聴マンガも必読。

http://www.amazon.co.jp/dp/4167753367/

傍聴ブームというのがあったことすら知らなかったのですが、本書を読んで傍聴したくなってしまうひとの気持ちがよくわかる一冊でした。わたしのように何事にもはまりやすい人間は、一度傍聴しに行ったら最後、足繁く裁判所に通いつめてしまいそうなそんな魅力があるんじゃないかというのはすごく伝わってきました。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、本屋に並ぶたくさんの小説よりも、こういう日常に転がっている数多の現実の方がよほど面白いのかもな知れないななどと思ったのでした。


本書を読んで一番おもしろかったのは、検事や弁護士、裁判官という職業に就いている人たちの等身大の姿が描かれていることであり、また、その姿が非常に多種多様だったという点です。
上記これらの職業に携わる人というのは日常ではあまり触れ合うことのない人ばかりなせいか、何だかとても遠い国の住人のように感じていました。その職業に就くために数多くの難関をくぐり抜けてきたということに対する畏敬の念や、法律という枠組みを理解しつくしている点がそう感じさせるのでしょうが、とにかく自分とは縁遠い生活を送っている人たちなんだろうなと思っていたのです。
そしてこの中で唯一露出が多いのが弁護士なのですが、例えば昔だと「バラエティー生活笑百科」が真っ先に思い浮かぶし、最近だと「行列のできる法律相談所」が思い浮かぶのですが、とにかくこれらの番組に出ている弁の立つ人たちを見ているとやはり自分とは住む世界が違うよなあとその存在の遠さを感じていたのです。
ところが、本書ではいまいちやる気に欠ける弁護士や裁判官が紹介されていて非常に意外に感じたし、遠い存在だと思っていた人たちの中には自分と近い人もいるのだということにも気付いたのです。特にお昼休みが短くなることを気にする裁判官の話はものすごくおかしいのだけれどとても親近感が沸いてくる話でした。わたしもお昼休みに営業担当者から業務に関する問い合わせが来るとついイライラして、「昼休みなんだから電話はしないで」と言ってしまうような狭量な性格であり、またさらに性質が悪いことに、そういう自分の小ささがとても嫌いでした。
でも裁判官のような高潔な人でも、お昼休みが減るのは気になるし許せないと思うことがあるというのはとても救われたような気がします。明日からお昼にかかってきた電話にはバンバンオフェンシブに攻撃していこうと心に決めました。


そのうち裁判員制度で呼び出されるかも知れないので、その時までには一度は傍聴しておきたいものです。