一年は、なぜ年々速くなるのか

『99.9%は仮説』の著者が、脳科学、物理学、生物学、哲学etcの最新エッセンスから現代人の時間感覚を科学する。

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年をとればとるほど時間が進むのが速い気がするというのはよく聞く話でして、わたしも常々そう感じていました。
小学生の頃は一年どころか一週間だってものすごい長く感じていましたが*1、20歳くらいを境にしてあっという間に一年が駆け去ってしまうような感覚に切り替わりました。さらに子どもが生まれてからはその傾向に拍車がかかり、まさに光陰矢のごとしを地でいく日々を過ごしています。


上記のとおりこれは私が特別そうだという話ではもちろんなくて、時間の進み方が速くなるように感じるというのは多くの人に共通した感覚であり、そして多くの人が同じように感じているからこそその理由についてはさまざまな説が飛び交っています。
わたしも学生の時から自分なりにその理由について考えていて、その中でもいくつか「これは!!」というアイディアを持っていたのですが、本書を読んでみたらかなり多くの人が原因として考えたことがあるという俗説とほぼ同じだったと知り、ものすごくがっかりしました*2。あまりにがっかりしてもう読まなきゃよかったと思ったりもしましたが、これが現実なのですから自分の平凡さにちゃんと目を向けようと思います。


話がずいぶんと発散してしまいましたが、本書は時間の進み方が違う理由についてさまざまなアイディアを出してはそれが正しいのかどうかという検証を繰り返しています。ひとつひとつのアイディアもとても面白いし、そしてそれらをさまざまな実験をとおして確認していくプロセスも非常に面白くてよかったです。仮説→検証→仮説→検証→...というフローは大学生の時には普通のことでしたが、働くようになってからはあまりやらなくなった気がします。


わたしが「これは面白い」と思ったアイディアは以下の2つです。

    1. スケーリング
    2. 「今」として認識出来る時間の単位が大きくなってしまう


1.は個体の大きさと時間の流れの速さには反比例の関係にあるという仮説。小動物ほど寿命が短いとか、生涯鼓動回数は決まっているとかそのあたりがとてもうまく組み合わさっていてとても説得力を感じました。
2.の方は分かりにくいかも知れませんが、1日が24時間というのはみんなに共通した固定値ですが、一方で個人が今として認識出来る時間の最小単位には個人差(同じ人でも加齢に伴って変わる?)があるために、それが大きくなると「今として認識した回数」が減ってしまうと。つまり一日が短くなるという考えです。これは非常にガツンときました。ものすごくおもしろいアイディアだなと思うし、脳という人間のCPUの動作に注目している点がそれっぽさを演出しています。


そしてこれが一番大事なのですが、本書で挙げられているほとんどがその原因に対して何も出来ないことばかりなのですが、ひとつだけ一日を短く感じさせないための手がかりについての記載があります。半信半疑で試してみましたがこれがとても効果的で、これをしっかりと意識している日は一日を短いと感じたことはまずありません。


タイトルを見て「何でだろう?」とすぐに思った方にはお奨めです。

*1:毎週木曜日にキン肉マンを見るのが楽しみでしたがもう毎週毎週待ち切れない思いで過ごしていたのを思い出します

*2:どういったアイディアだったのかは本書を読んでいただければすぐに分かります