「TIME/タイム」見たよ


21世紀末、人口増加を抑制するため人類は遺伝子操作により26歳以後は時間を買わなければ生き続けられない社会が舞台。金持ちは悠然と生き、貧しき者は奴隷の如く働き続けなければ若くして絶命する。時間格差社会で起こる出来事を描いた近未来アクション・サスペンス。

『TIME/タイム』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。


本作はお金と時間が代替可能になった近未来を舞台にした作品でして、25歳になれば外見上の変化(老化)はいっさい無くなる一方で、25歳になって以降に消費する時間はすべて自らが稼がなければならないというとてもユニークな世界を描いていました。

そんな不思議な世界を破たんなく丁寧に描いていたのはとても好印象でしたし、おもしろかったです。


さて。
上では「ユニークな世界」と書きましたが、実は通貨と時間を置き換えて考えること自体はそれほど目新しい考えではありません。有名なことわざに「time is money」というものがありますが、一番メジャーな解釈としては時間というのはお金と同じで大事だから浪費してはいけないよということをあらわしています。


また、以下のようにお金を引き合いに出して時間の大切さを表現したおもしろいコピペもあります。

私たちは一人一人が同じような銀行を持っています。それは時間です。毎朝、あなたに86,400秒が与えられます。毎晩、あなたが上手く使い切らなかった時間は消されてしまいます。それは、翌日に繰り越されません。それは貸し越しできません。

ろじっくぱらだいす | ちょっといいお話


この話のように「大事なもの」という点に着目すると、時間とお金はどこかで等価なものとして扱われることも多く、そう考えればこの作品の世界のようにお金と時間を置き換えるというアイディアそのものはさほどユニークとは言えないのです。

ただアイディアとして思いつくことはあっても、それをきっちりとひとつの作品として描いたものは他に無いわけですからやはり唯一無二の作品であると言えますし、ただのアイディアに留めずにちゃんとまとめて物語にして見せた点はユニークであると言えるかなと。


そして実際に通貨と時間を交換して何が分かったのかというと、富の不平等さがいかに理不尽なものであるかということがより実感として感じられるようになっていたのです。


分かりにくい表現なのでどういうことなのか補足したいのですが、例えば同じ仕事をしている人が二人いたとして一方が1,000円をもらい、もう一人が100,000円をもらっていたとすれば両者に明らかな不平等があることはわかります。ですが、そのような差があることに対しては、置かれている立場や能力差もあるからしょうがないよねとわたしは何となく納得してしまったりするのです。


ところがこの報酬をお金ではなく生きられる時間として考えてみると、それは単なる金額の多寡ではなく命に直結する話となるわけで、例えば上で挙げた例を1,000分(約16時間)と100,000分(約1667時間)に置き換えて考えてみると、その差の大きさがものすごく重みをもって伝わってくるようになるのです。


産業革命以降、富の一極集中が進んでいると言われていて、いまでは世界にある富の80%を数%の人が持っていると言われているのですが、その歪さを単に有している資産で比べるよりも、生きることのできる時間で比べる方が不平等さが直観的に伝わってくるし、そんなふうに感じられるように世界観をちゃんと作り上げてまとめていたのはとてもよかったなと感じました。


ただ、中盤以降は似たような展開の繰り返しになることが多くて、もう少し短くまとめてくれたらもっとよかったのになと思いました。あと20分短ければすごく好きになったんじゃないかな。



あとこの作品ですごく残念だったのはアマンダの魅力をまったくひきだせていなかった点でして、その点はもうちょっと頑張って欲しかったなと感じました。

ちなみにマイベスト・アマンダ作品は「赤ずきん」で決定なのですが、今のところ誰からも同意が得られていないもののこればかりはもう譲れません。「赤ずきん」が未見の方にはぜひ一度ご覧いただいて、アマンダたんの魅力を味わい尽くしてほしいです...という全然違う映画をおすすめしたところでおしまいにしたいと思います。


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