さまよう刃

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)

娘を持つ一人の親として、この本は読むべきではなかったなと悔恨の念を抱かずにはいられませんでした。
たった一人の家族である娘を陵辱されて失った親の心理描写があまりに生々しくて読んでいる途中何度も読むのを止めようかとさえ思ってしまいました。子どもがいる人で、特に娘がいる人は絶対に読むべきではないと断言できます。


また、娘を殺害した犯人が少年であることもこの作品を構成する大事なファクターになっているのですが、この要素は光市の母子殺害事件の公判でも問われた少年法のあり方/是非について、改めて考えるきっかけとなりました。とは言っても、元々未成年の改心など微塵も信じていなかった私にとっては、少年法の無意味さを再認識するにとどまったのですが、それでも自らの身に起こったことのように感じられることでなおさら少年法の本当の意味とは何か、無意味なのではないかという今までの感覚をより実感に昇華できたと感じます。


大事な家族を失った時、ほとんどの人が刃となってその矛先を探すのだろうと思います。その事に対して否定的な感情を持つ人は少ないと思いますが、一方で、敵討ちを禁止することで負の連鎖を強制的に断ち切ってしまうという現在の法も間違っているとは思えませんので、そのバランスがとても難しいなというのも非常に実感として理解出来ます。もっと積極的にいうと、「そうあるべきというのは分かるけども、でも実際に自分のこととして考えると...」というその感情的な部分の縛りを目に見える形にしてくれたなと感じました。


たぶん多くの読者にとってこの結末は納得出来ないものになると思いますが、私はこれについてどう消化するのか。
個人的にはとても興味のあるテーマだけに、これから毎日少しずつ頭の中で反芻して消化し、自分なりの答えを見つけたいと思いました。