ミスト


7月19日夜、メイン州西部の全域が未曽有の激しい雷雨に見舞われた。住民たちは嵐に脅えるが、その後に襲ってくる正体不明の“霧”こそが、真の恐怖だった。霧は街を覆い尽くし、人々を閉じ込めていく…。デヴィッド(トーマス・ジェーン)とビリー(ネイサン・ギャンブル)の父子は、買い物に来たスーパーマーケットで霧に遭遇する。外へ出ようとした人々は、次々に霧に襲われていき、店内に残され、閉じ込められた人々の間には、次第に恐怖が蔓延していき、極限状態へと陥っていく。絶望的な状況の中、デヴィッドとビリーは決死の脱出を図るが…。『グリーンマイル』のヒットメーカーコンビ、スティーヴン・キング原作、フランク・ダラボン監督が贈るミステリー大作。

『ミスト』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。
霧の中に何かいる...。
そんなおそろしい霧に囲まれてしまったスーパーマーケットの中に閉じ込められた人々。その人々が徐々に異常化していく様子がとても印象的な作品でした。正直、霧の中にいるモノの正体は特段面白くもなんともありませんでしたが、追い詰められた人々の豹変ぶりは非常に興味深かったです。


霧によって外に何があるのかまったく見えない。だけどそこに「恐ろしい何か」がいることは間違いなくて、逃げ出そうと外に出た人たちは一人残らず帰らぬ人となるのです。「クローバーフィールド」もそうでしたが、襲いくる相手の正体が分からないというのはそれだけで恐怖を助長し、正常な判断を鈍らせます。その恐怖感の演出があまりにすばらしくて、私もその霧の中に置いていかれたようなそんな恐怖や不安を感じずにはいられません。


そして、それよりも怖いと感じたのはひとりの女性に扇動される形で暴徒たちが形成されていくシーケンスです。
目に見えない何かを前に恐怖した時、人は神/宗教といった自らの思考や能力を超越するモノにすがりつきがちです。そんな恐怖/怒りといった心理をうまく操り、集団を形成して多数派となっていく部分には霧の中にいる何かよりもっと怖いものを感じました。結局一番恐ろしいのは人間なんだと思い知らされたのでした。


この作品で最も議論されるシーンとして考えられるのは、間違いなくラストシーンだと思います。原作にはないシーンをラスト15分に加えたとありましたが、たしかに取って付けたような違和感を感じるラストでした。ただ、うたい文句にあった「映画史上かつてない、震撼のラスト15分」というのは本当にそのとおりだと思います。いまだかつてこんなラストを迎えた作品は観た事がありませんでした。
周囲の反応を見る限り、そのように感じた人は決して少なくなかったのではないかと思います。
私がラストシーンに対して感じた違和感というのは、作品全体をとおして描かれていた「霧の中に閉じ込められている恐怖/閉塞感によって呼び起こされる人間の異常性」という視点が完全に欠落していたことによるものだと思います。それまで描かれていた本質的な部分を継承せず、単なるオチを加えたようにしか見えませんでした。


それともう一つこのラストが好きになれない理由としては、このシーンを自分の中で消化することが出来ないというのもあります。あまりにひどいラストだったので、「こんなすごいラストシーン観た事ないよ!!」と興奮するよりも気分が滅入る方が勝ってしまいました。


そんなわけで賛否両論あるかと思いますが、個人的にはラスト15分は無い方が好きです。
救いがあるとかないとかそういうのは抜きにしてもです。


それでも、そのラストに至るまでのストーリー展開は本当にすばらしくてとても面白かったです。


公式サイトはこちら