「映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!」見たよ


日本のB級グルメを守る“伝説のソース”を運ぶことを任された、しんのすけたちカスカベ防衛隊。しかし、そのソースは…A級グルメの魔の手からB級グルメを救える唯一のソースだった! 果たしてしんのすけたちは、無事にソースを届け、庶民の“ささやかな幸せ”を守ることができるのか?

『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮でしんちゃん大好きなハホとアオといっしょに観てきました。

ここ数年、子どもたちからの要望もあってしんちゃんの映画を毎年観ているのですが、当たりはずれが少なくて安定して楽しめるものの「ものすごいおもしろい!」というくらいとびぬけて気に入る作品はないなと思っていました。もちろんそつなく楽しめるので不満はまったくありませんでしたが、逆にいえばつよく記憶に残るような作品がないことは唯一物足りないとは思っていました。

ところが!

ところがですよ!

今年観たこの作品は本当にすばらしくていままでみたクレヨンしんちゃんの映画の中でも断トツでわたし好みの内容でしたし、今年観た映画の中でもいまのところ一番よかったと言えるくらいすばらしい作品でした。非日常的な設定とところどころに散りばめられたくだらない笑いはいつものしんちゃん映画らしさを感じさせてくれましたが、しんちゃんたちが自分たちなりにしあわせだと思えるものを見つける過程を丁寧に描いていてその部分に心底感動しました。


しんちゃんの映画に限らず、日常系と類される作品が映画になったときには話が壮大になりがちです。


ふだん(TVなど)の放送枠が30分など短めだったものが2時間近くの長時間の物語になるわけですから、物語が壮大になるのもいたし方ないですし、そもそもそれ自体が悪いわけではありません。たとえばドラえもんの大長編が良い例ですが、短編ではとても語りきれないような冒険が見られるのは映画ならではだと思います。


そしてしんちゃうんもその例にもれず、ここ数年の劇場版でくりかえされていたのは世界平和だったりどこかの国だったり、つまりなにか大きなものを守るために野原一家が奮闘するという内容が多かったように記憶しています。


そんな作品の中で観ていて違和感をおぼえたのが前作「嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス」でした。



この作品は「ひまわりとケンカ中だったしんちゃんが別の星からきた2人組にひまわりを渡す契約書にサインしてしまう」ところから始まる作品であり、最終的には宇宙全体の行く末まで変えかねないというひじょうに大きな枠組みでの物語となっています。

と、話の枠自体はひじょうに大きいのですが、ストーリーのコアは「宇宙平和のためにはひまわりがこの星の姫にならなければいけない」と知らされた家族の葛藤が中心になっています。つまり枠は大きいけど、その実態は「家族と世界のどちらを救うのか?」という個人の価値観を問う小さなトピックでしかないのです。


正直にいってこの作品はおもしろくありませんでしたし、興行収入もかなりよろしくなかったらしいので世間的な評価も似たようなものではないかと思います。

ただ、この作品が問題提起していた「個人にとっての幸せというのは、国のためだとか世界平和のためだとかその他大勢に類する他人のためという大義の中にあるわけではなくて、あくまでその人自身を取り巻く大事な人たちとの中にしかない」と点はすごくおもしろいなと思ったのです。


今作で描かれるのも「幸せとはなにか」ということであり、前作よりもそれをリアルなスケール、つまりB級グルメという多くの人にとって同じ目線で語れるテーマを描くことでその主張に説得力をもたせていたように感じましたし、そのことをもっともつよく感じさせられたラストシーンはもう自分史に残るくらい強烈に感動してしまいました。


そのラストシーンというのはしんちゃんたちが歌いながら自分たちで焼きそばをつくり、それを食べるシーンでして正直すごく普通のシーンなのですがこれが本当にすばらしいのです。


ふだん料理なんてしない子どもたちが作るわけですから、ふつうに考えればその焼きそばがそんなにおいしく出来上がるわけはないのですが、空腹なうえに自分たちでがんばって運んだソースと自分たち自身で作ったものだから死ぬほどおいしく感じられる、そんな様子がヒシヒシと伝わってきました。

A級、B級問わず、世間からグルメともてはやされた何かではなく、自分たちが作ったものを食べてそれを心からおいしいと感じることはきわめて個人的な体験であり、それを仲の良い人と共有している瞬間というのはとても幸せなことなんじゃないかなと観ながらグッときました。


ぼんやりと今年のベストはこの映画かなとこの時点で思うくらいの傑作でした。とりあえずもう一回観に行きたいなー。


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